30条の適用について

今、30条(新規性喪失の例外)適用案件の出願をやっています。30条は「例外」という位で、実務的には極力使わないようにしていますが、どうしても適用することもあります。

実務的に30条を使わないのは、主な理由としては「外国出願が不利になる」からです。日本の場合は公知行為から6月ならOKですが、EPみたいに「一切認めない」や、中国みたいに条件がやたら厳しい(実質日本での公知行為は不可)国もあるので注意が必要です。

日本国内の出願だけを考えているなら問題無いのですが・・・各国の扱いが異なるので、公知行為の前に出願してしまうというのがベストです。


そういえば、30条については一つ論点があります。古い短答試験の過去問になりますが、

甲は、独自にした発明イを刊行物に発表した日から6月以内にイを一部に含む特許出願Aをし、当該発表の日から6月以内にイを分割して新たな特許出願Bをした。この場合、Bについて特許法第30条第3項の手続をしていても、Aについて当該手続をしていないときは、Bに係るイについて新規性の喪失の例外の適用を受けることができる場合はない。(H6−33−2)

です。これが「○」か「×」か。

従来の解釈では「○」です。分割出願等の場合、原出願で手続をしていないと新規性喪失の例外適用は受けられないというものです。

ところが、平成23年法改正により、これがサクッと「×」に変更となりました。特許庁発行の「発明の新規性喪失の例外の適用を受けるための出願人の手引き」の14ページ、5.2に記載があります。

5.2 分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願の場合
原出願の出願に際して手続([2.]の(a)〜(c))を行えば、分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願を行う際には、再度の手続は不要です(特許法第 44 条第 4 項、第46 条第 5 項、第 46 条の 2 第 5 項)。
また、原出願に際して手続を行っていなかった公開された発明については、発明の公開日から 6 月以内に分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願をして手続([2.]の(a)〜(c))を行えば、第 2 項の規定の適用を受けることができます。なお、原出願の出願に際して手続をせずに発明の公開日から 6 月経過後に分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願をした場合は、第 2 項の規定の適用を受けることができません。

したがって、適用を受けることが可能となります。論文試験で「分割」等が出てきたときに余計なことを書かない注意が必要です。

いつも書いていますが論文試験は「原則」を書く試験です。短答試験の頭だと「余計なこと」を書いてしまいますが、今何を聞かれているかを常に考えて、必要なことを淡々と書いていくようにしましょう。