メンタリスト

「メンタリスト」「メンタリズム」という言葉が、DaiGo氏以外の人に商標登録されそうになっているというニュースがありました。
出願人は「一般社団法人 日本メンタリスト協会」。ざくっと書きます(後で更新するかも)。

出願人が商標登録出願しているものは複数あるようですが、例えば「メンタリスト」については、

【出願番号】 商願2012−32498
【出願日】  平成24年(2012)4月24日
【商標(検索用)】 メンタリスト(MENTALIST)
【標準文字商標】
【称呼(参考情報)】 メンタリストメンタリスト,メンタリスト
【区分数】  2
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
9 録画済みDVD・ビデオテープ・ビデオディスク及びCD−ROM,電子出版物
16 印刷物,雑誌,新聞

となっています。ここで、「メンタリスト」について第三者(ここではDaiGo氏)の使用がどうなるかという問題が出てきます。

登録になるのか

識別性

そもそも、このメンタリストが登録になるのか?ですが、まず商標法3条1項1号〜3号に該当するのかどうかという部分になります。「メンタリスト」に識別力があるのか否か?
単なる「普通名称」であるのであれば、3条1項1号に該当します。また、DVD等の中味について示しているに過ぎないのであれば3条1項3号に該当します。ただ、3条に該当する場合は、「そもそも商標として識別力がない」という意味なので、例えばDaiGo氏自身も「自分を表している」ということができません。
DaiGo氏が「自分がこの言葉を広めた」という主張を今後するのであれば、当然3条1項1号、2号に該当しては主張出来ません。せめて、3条1項3号に該当するが、3条2項で識別力を獲得しているという主張になります。

4条

仮に識別性がある場合、今度は4条1項8号、10号、15号に該当するか否かという事になります。まず、出願時に該当していることが必要なのですが、本件は出願日が4月です。

DaiGoメンタリズム ~誰とでも心を通わせることができる7つの法則~

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例えばこの書籍の場合、発売日は2011年9月です。なので時期的な要件(両時判断の要件)は満たしています。
しかし特許法等と異なり、商標は単純に先に使用してるだけではだめです。すなわち「周知性」が必要です。当時TV出演していたり、4月までの間でも書籍を更に出版しているので、おそらく出願時に周知性はあったと思います。
すると、4条1項8号、10号、15号に該当するか否かですが、商標は「商品」「役務」との関係が大切です。「メンタリスト」を何の商品やサービスに使っているかです。10号に該当するならその判断が重要ですし、15号にしても何と混同を生じているのかという問題があります。

周知性

結局、「メンタリスト」「メンタリズム」が、DaiGoを識別するものとして周知であるか、みんなが認識しているか否かがポイントになるかと思います。今度は著名な略称に該当すれば、4条1項8号に該当するからです。
しかし、

THE MENTALIST / メンタリスト 〈ファースト・シーズン〉コレクターズ・ボックス1 [DVD]

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2010年の段階でこのようなドラマが制作されています。そうすると、単純に「メンタリズム」「メンタリスト」=「DaiGo」とはならないかもしれません。メンタリストという言葉が普通名称では無いか?という話になるからです。

DaiGoの使用

では実際登録されてしまったら?
今までの使用した分については問題無いのですが(金銭的請求権も考慮しなくて良さそうです)、当然商標権が登録された後は種々の問題が生じてきます。
上記のことを踏まえれば、DaiGoが使用したとしても、先使用権を主張したり、商標の効力が及ばないことを主張したりすることは出来そうです。しかし、それは訴訟で一つ一つ判断されていくので、確実にOKという訳ではありません。

権利が発生してしまうと、訴訟リスクは高まります。したがって、審査段階において情報提供を行ったり、権利化後に異議申立を行うという手法を取るのがまず取り得る措置かと思います。