弁理士の資質

今日は特許の出願に関するヒアリング(打合せ)でした。今は新幹線です。

弁理士(事務所)としては、「審査に強い権利」を意識することは当然なのですが、「権利行使に強い権利」を作ることも検討していかないといけません。
権利行使に強い権利というのは、無効理由を有さないという点、限定解釈をされないという点、権利行使をしやすい(侵害特定が容易)という点です。
とくに、技術内容に話が終始していて、何気なく「この特許って他社が実施したら、どうやって侵害特定をするのか?」と考えます。そうすると、ときどき「侵害特定ができない」場合があります。

もし特許になっても、相手が侵害しているか否か解らない(請求の範囲の構成要件を実施していることが特定できない)と権利行使ができず、絵に描いた餅です。

また、侵害特定ができても、容易に侵害回避が出来てしまっては意味がありません。とくに自分が専門の情報系の特許は侵害回避が容易な分野です。
したがって、打合せで話を聞いているとき、「もしこれが侵害回避の相談だったら、どうするか」という点で検討していきます。そして、侵害回避が想定される穴をつぶしていきます。

そのような検討をするためには、現在どういう技術があるか、回避するためにはどういう処理をするのか、思いつかないといけません。
そのために、今ある技術を知るためにヨドバシに毎日寄っているのです。そして、気がついたらうっかり色々な新製品を買っているのです。そう、仕事上必要なのです。

と、自分の趣味を正当化してみました。

冗談はさておき、実際コンシュマーレベルの技術が既にあれば、明細書でカバーすべきです。自分のように、色々なものを買いまくる必要は無いのですが、やはり今のコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、オーディオ機器・・・ある程度の分野において、現在どういう製品が発売されていて、今後どういう製品が発売予定かは知っていて当然だと思っています。

例えば、携帯電話の出願であっても、画像処理の話になったりします。このとき、携帯電話ではない技術であっても、デジタルカメラの分野では行われているということはあります。このとき、発明者にそのことを確認する必要があります。
また、映像機器の発明では、家庭用テレビには使われていない技術が既にカーナビゲーションで使われていたりする場合もあります。このように、情報処理では複数の分野を把握しておく必要もあります。

ここで勘違いしてはいけないのは、それは「進歩性がないです」と発明者に突きつけるためではありません。そのような技術と如何に差異を出すのか?という点で話をしていきます。そうすることで、審査に強く、良い発明になっていくと思います。

自分は、弁理士として一番必要な素質は「好奇心」だと思っています。新しいもの、新しい技術を知ることも好奇心ですし、発明者の話を聞いて「面白い」と感じるのも好奇心です。担当している企業の製品を知ることも好奇心です。好奇心が旺盛であれば、弁理士に向いていると思います。

自分が案件を担当している企業についても、どんな製品を出しているのか、どういうことをやっているのかと興味がわくのが普通ではないでしょうか。

企業の知財部の方は、もし機会があれば御社の製品について弁理士に話してみてください。カタログレベルの製品であるにもかかわらず、弁理士があまりよくわかっていないようであればその弁理士は二流です。その弁理士が担当しても、良い明細書は出来ないと思います。


と書いて、自分が答えられなかったら・・・仕事切られてしまいますね(苦笑)