勉強の深度

非常に良い質問&話が有りましたので、ちょっとそれに基づいて書きたいと思います。質問者の方には例に使ってしまい大変申し訳無いのですが、勉強の方法について何らかのヒントを得ていただければと思います。

質問

特許法30条2項かっこ書きと意匠法4条2項かっこ書きの違いについて、質問があります。かっこ書きは、23年度改正で追加された文言ですが、過去に特許法では、判例(第3級還式アミン事件)にて公報は、刊行物にならないと判示されております。意匠法では、別の判例(おろし器事件)にて、公報が刊行物にならないと判示されております。
特許法30条2項かっこ書きと意匠法4条2項かっこ書きが設けられた趣旨について、各々判例にて判示されている結果、趣旨も異なるのでしょうか。

回答

結論から言えば趣旨は同じと理解して良いと思います。そもそも、特許法と意匠法とで異なる判例があったのは、条文の規定振りが異なったからです。平成23年改正前は、特許法においては刊行物公知に該当する場合は新規性喪失の例外の適用があったので、(外国)公報が刊行物に当たるかどうかという部分が問題になりました。
ところが、意匠法は自己の行為に起因する場合、総て問題無いという規定でした。したがって刊行物に当てはまるか否かという問題とは別に適用しても良いのでは?と争点になりました。その為別の判例となっています。

しかし改正後は、そもそも新規性喪失の例外規定については特許法も意匠法も同じ規定となりましたので、同じ趣旨と理解して構わないと思います。というのが質問の回答となります。

勉強法について

ここで上記の質問について。この内容は自分がガイダンスで話すところの「研究の勉強」になる、「試験勉強」ではないと考えています。
まず、現行の30条2項かっこ書き等については、改正本の内容の趣旨を理解すれば十分です(H23改正本 P.168、P169)。何故かというと、条文に規定がある以上、短答試験でも論文試験でも条文で答えられます。また、趣旨については改正本・青本で十分です。
試験に出ない部分(すなわち、過去問で見ないもの)については、深追いするのは得策ではありません。今回の場合、確かに平成23年以前の過去問の解説では旧判例の掲載がありますので勉強をしているかも知れません。しかし、平成23年改正で条文に入っている以上、「改正で変わった」との理解でよろしいかと思います。

たまたま、今回この条文(判例)でしたが、受験回数が多く、かつ、点数が伸び悩んでいる人ほどこの傾向が顕著です。細かい判例、学説等学習されている人もいますが、「試験に出るか?」という視点が必要です。優先順位としては、条文の理解が先になりますので、まず条文+過去問をきっちり仕上げることを優先した方が良いと思います。

ただ、解らないことは質問はすべきです。そもそも疑問点が重要か否か、受験生は判断出来ないからです。したがって、自分が教わっている講師に疑問点はぶつけるべきです。
受講生の方は必要以上に「こんなつまんない事を聞いたらだめじゃないか?」と考えがちですが、講師は基本しゃべり好き、教え好きです。したがって質問をした上で「試験に出るか」確認して下さい。で、試験に出ないなら聞いた上で忘れて良いと思います。

国家試験は勉強量以上に戦略が重要です。あまり試験に出ない内容(ノイズ)を増やさず、試験に出る重要な点をきっちり詰めていくことが合格につながると思います。勉強を長くやってくると色々と深いところまで勉強したくなりますが、一歩手前で止めることも戦略の一つです。

【追記】

下記コメントにも書きましたが、論点や内容の重要度は講師によってとらえ方がばらばらです。だから甲先生は重要といっても、乙先生は不要と答える事はあります。受験生は本当に困りますよね。ただ、こういう場合、自分に合った講師の意見を信じるのが精神衛生上は良いと思います。