平成25年論文試験雑感

とりあえず平成25年の論文試験をざっと見た段階で感じたことです。来年以降受験される人の指針になればと思い思いついたことを書いておきたいと思います。

なお、論文試験は相対評価、みんなが書いていることで結果が変わる試験です。受験機関の模範解答、特許庁の論点からずれているとしても、それが結果になるとは限りません。
白紙で出したのであればともかく、何か書いたのであれば「受かっている」という気持ちで勉強を進めるべきです。それでは、平成25年の論文試験に関する簡単な講評です。

特許法 第I問

184条を題材にしつつ、1.職務発明、2.29条の2、3.権利化後の当て込み(補正により実施形態を他社製品に当て込む)内容が記載されています。
職務発明と29条の2は趣旨問題も含んでいますが、受験生なら答えて欲しい問題です。最後の権利化後の当て込みは、実務的にはあり得る話です(ただ、補正で実施形態を追加するまではどうかと思いますが)。受験生という立場だとちょっと考えにくかったかも知れません。
なお、最後の当て込みでちょっと難しいのは、侵害者側だと発明a2に関しては意識的限定(公知技術除外、包袋禁反言)を主張することは実務的にはあり得るかと思います(とりあえず言えることは言いますから)。しかし、問題文の新規事項追加によって拒絶理由を受けていることから、公知技術除外が認められるのは厳しいと思います。
職務発明は大予想論点であったため、結構書けた人も多いと思います。来年の指針としては、特許法においても簡単に趣旨を書けるようにする必要はあると思います。

特許法 第II問

侵害問題と補償金請求権、共同出願に関する問題です。割とオーソドックスの問題なため、淡々と項目を挙げていく姿勢が大切だと思います。
来年の指針としては、条文をベースにしつつ、このような典型問題のパターンを押えることが合格への近道だと思います。

意匠法

部分意匠制度を中心とする事例問題でした。趣旨問題は部分意匠についてでしたが、最近の傾向からこの点はキッチリ記載出来ていると思います。
事例問題といいつつ細かい論点をたくさん問われている問題でした。このような問題は全体的にまんべんなく記載することが重要です。そうでないと、答案のバランスが悪くなるからです。その点に注意して論文を記載する必要がありました。
パリ条約についての書き方が少し難しかった点と、バランスを崩して極端に記載の厚いところと薄いところが出来てしまう可能性を検討することが大切だと思います。

商標法

1問目は商標法1条の趣旨という理解の基本が問われる問題でした。いつも講義で「条文は大原則から考えるように」と話をしています。ただ、何を記載して良いか解らないという人も多かった気がします。商標権者の義務については、使用(不利益=不使用)を記載すれば良いでしょう。今後も「この条文は何故あるのか?」というしてから学習をしていくことで、論文対策になるかと思います。

2問目は団体商標制度、地域団体商標制度に関する問題です。基本的な制度趣旨からはじまり、それぞれの制度、他人の登録商標との関係について問われています。地域団体商標は、商標法の中でも大ヤマでしたので、趣旨は書けた人も多いでしょう。

基本的にはこの問題は「書きすぎない」というのがポイントだと思います。例えば、問題文において「日本国内の地域ABCの多くの飲食店で、地元特産の牛肉を使った牛丼を「ABC牛丼」で提供しており、「ABC牛丼」について地域団体商標の登録を受けたいとの問題があります。問題文には「ABC牛丼」に対する指定役務・商品について「牛丼の提供」「牛丼」として出願すると書いてあります。しかし、この指定商品では地域団体商標として商標と商品等との関係が明らかではありません。したがって登録を受けることが出来ません。

このとき、どのように出願すべきかまで記載せず「不適切」ってレベルで答案は記載を止めてしまって良い気がします。一歩踏み込んで補正案まで書こうとすると難しいです。本来、地域団体商標の指定商品は産地との関連性が必要となります。したがって、指定商品であれば「ABC産の牛肉を用いた牛丼」と記載する必要があると思います。しかし、そこまでは答案レベルとしては要求されていないでしょう。

「知っていることを書いた答案」=「合格する答案」ではなく、「点数が取りやすい答案」が合格する答案だと思います。来年受験される人はその点を意識されるとよろしいかと思います。