分割出願及び査定後分割について

ご質問があったのでお答えします。
どちらかというと実務的な話となります(試験的には重要ではありません)

質問1

分割出願をする際に新規事項を追加してしまった場合、出願日は遡及しません。
その場合、例えば、原出願とその分割出願の間に、新規性を否定する引例があれば、分割出願については新規性違反の拒絶理由が通知されて、追加してしまった新規事項を削除する補正をすれば出願日が原出願時に遡及することになり、拒絶理由が解消するという理解で正しいでしょうか?

出願日が遡及していないという拒絶理由を受けた場合は上記対応で問題有りません。
例えば、請求項1、請求項2があり、請求項2が原出願の記載にないとなると、分割出願は遡及しません。
したがって、請求項2を削除することにより分割出願の要件を満たすことになり、出願日が遡及します。

質問2

特許査定後分割についてご質問があったのでお答えします。
ゼミで話をしましたが、特許査定は「権利行使が出来る」というメリットが当然あるのに引換え、逆に「他社が権利回避をしやすくなる」というデメリットもあります。
特に新製品であったり、現在進行中の規格系特許の場合その傾向は顕著です。したがって、出願状態を係属させるという意味での分割出願が行われます。

この出願についても、何れは審査→査定という流れになります。企業の方と話していると「早期審査と逆に審査遅延をさせる制度が欲しい」という話も聞きます。ただ、早期に権利を安定させたい特許庁の行こうにそぐわないため、難しいと思います。

質問3

「想定した以上に広い範囲であるにも関わらず特許査定となってしまった場合」の対応について。

すなわち、一度拒絶理由が来るだろうという考えのもと、審査請求をしてみたら思わず特許査定となってしまった場合です。
「ラッキー!」と思う人もいると思いますが、やはりそのような状態と特許査定は無効理由を包含している事も多く、他社牽制は出来ますが権利行使となると使いにくい特許となります。
しかし、特許査定となっている以上補正は出来ませんし、わざわざ訂正審判を請求するのは現実的ではありません(無効審判中の訂正も出来ますが、無効審判を請求されるのも問題でしょう)。

したがって、問題点が明らかである場合には特許査定となった出願については他社牽制としてそのままとし、権利の安定性がはかれる出願を分割出願するという方法が適切かと思います。

ただ、特許査定となった出願の記載が曖昧ですと、分割出願と39条の関係になる場合も出てくるので対応が難しくなってきます。したがって、本来は審査請求時に瑕疵がある(少なくとも36条違反が包含されている)と考えられる場合は自発補正をしておくことが必要だと思います。