段階的な勉強について

先日のブログにご質問があったのでお答えします。

勉強は「段階を踏む」ことが大切です。これは勉強だけに限らず仕事でも同じです。
例えば、いきなり細かい業務を全部教えても(教わっても)出来るようにはなりません。
全体的に何が大切か、そして次に一つずつ細かいこと、そして例外へと落として覚えていきます。
仕事はみなさんそうされるのですが、「勉強」になるといきなり「全部やろう」とする人が増えます。
まず、「大きな理解」を行い、そこから「細かい知識」に流れを作って下さい。

細かいご質問にお答えしていきます。

条文の理解について

短い条文は、読めば大体分かるのですが、長い条文や要件が複数ある条文はなかなかざっくりと理解できません。青本に書いてある条文は青本で何となくですが分かるのですが、青本に説明がない条文等はとても困ります。

原則、青本には総て「条文の解説」が最初に入ります。
例えば、ご指摘にあった特126条について読んでみます(P.369)。

本条は、訂正審判について規定したものである。

と、まずは126条についてざっくり書いてあります。その後訂正審判の趣旨の記載があります。

訂正審判は、主として当該特許について一部に瑕疵がある場合に、その瑕疵のあることを理由に全部について無効審判を請求されるおそれがあるので、そうした攻撃に対して備える意味において瑕疵のある部分を自発的に事前に取り除いておこうとする者のための制度である。(そのほか明瞭でない記載があると、とかく侵害事件などを起こしやすいので記載を明瞭にして争いを事前に防ぐため訂正審判を請求する場合などもある)。

ここで、訂正審判の趣旨をつかみます。この辺りの理解が論文試験につながっていきます。そして、126条1項但書は色々書いてありますが、何故これが書いてあるかというと、

一項ただし書は、訂正審判において訂正が認められるための訂正の目的を示したものである。

と、ざっくり意味が書いてあります。ちなみに、自分の場合、この「規定」の記載についてはピンク色でマークしています。
その後は、色々な趣旨が書いてありますが、しばらく軽く読めば良いでしょう(少なくとも入門時期ならそれでOKです)。

P.370にはいると、今度は2項に話が移ります。

二項は、特許無効審判が請求されてからその審決が確定するまでは、原則として訂正審判を請求することができないことを規定したものである。

これが2項を一言でまとめたものです。更に続いて読むと

三項は、平成二三年の一部改正で新たに設けられた訂正審判の請求の単位に関する規定である。

四項は、平成二三年の一部改正で新たに設けられた規定であり、請求項ごとに訂正審判を請求しようとする場合であって、明細書又は図面の訂正が複数の請求項に係る発明と関係する場合、当該関係する請求項の全てについて請求をしなければならないことを規定したものである。

このように、青本にはほぼ総ての条文について、一言ではどういう規定か?ということが書いてあります。まずこのレベルの理解をしていくことが必要となっていきます。

段階的な学習について

今年の短答試験をダウンロードして見てみましたが、[10]は訂正審判のざっくりとした理解だけでは正答を導けませんでした。本試験では、条文の細かいところも問うてきています。このようなことに対しても万全の対策を立てておきたいからです。

これは難しいところですが、簡単に言えば「当然」です。
ざっくり理解出来たからといって、本試験の問題は解けませんし、合格出来ません。

今の状態は

  • 初めて教習所で車を乗った人が「これじゃF1で優勝できません!」
  • ボクシングに通い始めて2回目に「これじゃ世界チャンピオンと戦っても勝てません!」
  • ゴルフの打ち方を初めて知った人が「明日プロテストに受けたら落ちてしまいます!」
  • 初めて裁縫を習い始めた人が「このやり方じゃドレスは作れません!」

という状況と同じです。

すなわち、学習には段階があり、練習(経験)が必要です。
その為には土台を作り、作った土台の上で練習を繰り返しする必要があります。
当然最終的には細かい規定や条文を押える必要はあります。そのとき、土台が出来ていないと丸暗記しなければいけません。
そうならないために、今の時期は土台をつくって欲しいのです。そして、その土台は条文をアバウトに捉えるということです。

細かい要件を押えるのは、スマートコースを一通り受講し終わり、ご自身で短答過去問を使いながら学習する段階で十分だと思います。

これ問!の使い方

あと、これ問!の使い方を補足しておきます。
これ問は単なる枝別の過去問集という位置づけではありません。

「条文を読むときに、何処から出題しているか」を確認するために利用して下さい。
すなわち、問題を解く必要はありません。
条文と問題とを比べて、要件を確認するのに使って下さい。

出来れば、四法対象等を利用し、どの条文の言葉が使われているのか、どの要件が問われているのかチェックし確認するツールとしてご利用下さい。
これ問を使うことにより、メリハリをつけて条文を読むことが出来ます。なお、解説は簡易的なもの(ないものも多いです)ため、過去問集を併用してご利用下さい。


勉強すれば勉強するほど「どうすれば良いんだろう」と感じる試験です。
折角審判を超えて勉強が進んでいるということはかなり良いペースですので、今は細かい部分に拘らず、まずは土台を作る事に専念して下さい。
頑張って下さい。