意匠法5条3号の趣旨

質問がありましたので、お答えします。

青本P1081 L7 意匠法 5条3号について「部分意匠制度を導入したことに伴い新設した。」とはどういうことでしょうか。

5条3号はご存じの通り、「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」については保護しないという規定です。

この規定が何故部分意匠とつながるのか?

まず、その物品の機能を確保するために不可欠な形状は技術的思想の創作であるから、特許法で保護するのが原則です。しかし、平成10年改正前はこのような意匠であっても出願があれば登録となっていました。

これは、意匠全体がこのような形状であることが想定されにくかったからかも知れません。また、このようなデザインは既に公知になっていることが多かったのでしょう(この辺はかなり昔の話ですので、受験生としては深追いする必要はありません)。

したがって、この点について問題はあったと思います。「技術的な思想なのに意匠で登録されることもある」「何とかしなきゃ」という状態でした。

さて、平成10年に部分意匠制度が導入されます。部分意匠制度の趣旨は「特徴の有る部分を保護しよう」というものです。

そうすると、「特徴の有る部分」が、部品でなくても保護されることになります。このとき、「その特徴有る部分」を「物品の機能を確保する」部分に持ってくる出願が考えられた訳です。

例えば、空力上必然となる形状があって、ここだけに今までは意匠登録を受けるということは出来なかった。しかし、部分意匠が導入されたことにより、その部分について部分意匠を受けようとする、部分意匠制度を悪用する連中が出てくるのでは?ということになった訳です。

正直言えば、部分意匠が導入されたという理由をいいことに、「ついでに入れちゃえ」という感じの改正です。したがって部分意匠が導入前からもこのような問題は発生していました。部分意匠が導入されたため、今まで以上に懸念が高まったということです。

部分意匠だけの問題ではないため、「部分意匠を導入したことに伴い」で違和感を感じるのだと思います。それが冒頭に質問につながっていきます。


同様のついでに入れちゃえ!みたいな規定に意匠法3条の2があります。意匠法3条の2も、部分意匠の前から同じ問題(全体意匠と部品意匠との関係)があったわけです。
部分意匠が導入されたのが直接的な原因というより、従来より問題点が顕在化したということで改正になった訳です。