無料という悪魔の実

iPadの発売については昨日のブログに書きましたが、併せてMacOSのリリースも発表されました。今回のMacOS、何と無料で提供されるそうです。

Windowsも8.1になり、8から8.1は無料でアップグレード可能です。
しかし、Windows 7からのアップデートは有料となります。

ハードウェアを含めたAppleのモデルと、ソフトウェア販売を中心とするMSのモデルでは一概に比較出来ないとは思います。

しかし、MacOSの開発にも費用はかかっています。
新しいOSが、無料というのは驚きました。
ただ、それが必ずしも良いかと言われると、難しいところです。

先日亡くなられたやなせたかし先生。
偉大な先生ですが、存命中は地方のゆるキャラの作成を依頼が来たら書いていたそうです。それも殆ど無償で引き受けていたとのこと。その数150体以上。

最初のうちは感謝していた地方自治体も、割と「ただで書いてくれるんでしょ?だったら書いてよ」ノリになってきたらしく、これはこれで残念なお話。

さて、この「無料化」というのは、困るのは周りの人です。
「あのOSが無料なんだから」
「あの先生は無料で書いてくれるだから」
といった感じで他の人にも影響が及ぶのが困るところです。
全員が無料で良いですという環境で出来る訳ではないでしょう。
若いアーチストが、「やなせたかし先生が無料なのに、お金取るの?」と言われたらしく、とても困惑したとの記事も読みました。

相当の対価というのは、仕事をしている以上、必要だと思っています。

これは弁理士の仕事にしても同じです。
最近、この業界も厳しく、特に商標の世界では価格競争が起こっています。
「商標 出願」と検索すれば事務所がたくさん出てきます。
その中には、事務所手数料を値下げしている事務所がかなりあります。
更に、拒絶査定となったときには全額返金するという事務所も見受けられます。
中には、特許庁に支払った出願手数料(印紙代)まで返金する事務所もあるようです。

個人的には、それは良い事なのか?と、ふと思うわけです。
当然その事務所はそれなりの根拠があってされていることですから、それについて自分が言う立場ではありません。

しかし、出願業務、中間対応業務についてはその仕事をしている訳ですから、相当の対価を受け取るのは当たり前の話です。
安い事務所が仕事が手抜きしているという訳ではありません。逆に、真摯に業務に取り組んでいる事務所も多いと思います。
したがって、その事務所は良いのです。
しかし、そういう価格設定が業界全体に影響を及ぼすという点をどの程度考えてらっしゃるのかが気になるのです。
当然登録が目標とはいえ、拒絶になったしまうと仕事の価値が「0」になるのか?と言われれば違うと思うのです。

例えば、病院は病気を治すところです。
しかし、治らない病気もあります。
病気が治らなかったら治療に意味が無いのでしょうか?
「病気が治らなかったら治療代返金!薬代返金!して欲しい」とは自分は思いません。

仕事に対して相当の対価を支払うことは当然だと思っています。

それはここの弁理士試験に関する情報提供も同じです。
質問対応について、ある程度線引きをしているのは、既存の受験機関・講座等に迷惑がかからないようにするためです(と、このブログにそれほど影響力は当然ありませんが)

例えば、私が全部このブログでレジュメをアップする、質問に全部答える。
それにより、私の講座にくる受講生が「0」になってしまえば、多分LECから「もう講師しなくていいよ」と言われるでしょう。
そうなると、本末転倒な訳です。

「何でもやります」「無料でいいです」というのは、最初は良いのです。
しかし、結果として場があれてしまえば元も子もないのです。
サービスを提供される側も、提供を受ける側も「自分だけ良ければあとはしらない」という気持ちではだめなのです。

ただ、対価をもらう分、それ以上の仕事をすることは当然です。
対価とサービス提供とのバランスは非常に難しいところです。