審判請求書の補正について

受講生からTwitter経由でご質問があったのでお答えします。

特許無効審判を請求する場合、請求書副本送達前には補正許可できないので(131条の2第3項)、133条1項及び2項の補正命令もできないと思うのですが、この場合「不適法で補正不可」な審判請求となり、135条で審決却下となるのでしょうか。

まず、131条の2第3項の規定は、「前項の補正の許可は」となっておりますので、2項の話です。
すなわち、2項については「請求の理由の補正が要旨を変更するものである場合において」と規定されております。

したがって、仮に問題がある審判請求であっても、記載要件違反が比較的軽微なものであり、必ずしも請求の理由の要旨を変更する補正を伴うことなく記載要件違反を治癒できる可能性がある場合は補正命令がでます。

2項との関係を押さえて欲しい条文です。

参考までに審判便覧51−04の内容を転載しておきます(受講生は一度見たら理解するだけで十分です)。
なお、蛇足ですが、審判便覧でさくっと書いてあるように、審判請求書の「補正自体」の根拠条文は17条1項となります(131条の2は補正の制限に関する規定です)。

<記載要件違反の場合の取り扱い>
1.補正命令・決定却下及び審決却下
審判請求人は、審判が特許庁に係属しているときは、審判請求書の補正をすることができる(特§17(1)、実§2の2、平23附§19旧実§55(2)、意§60の3、商§68の40(1))。

記載要件違反を発見した場合には、
(1)審判長は、補正命令により補正の機会を与えた後、不備が是正されない場合に決定をもって審判請求書を却下する(特§133(1)(3))
、又は、
(2)合議体は、補正の機会を与えることなく審決をもって審判請求を却下する(特§135)
のいずれかの措置をとることができる。

どの措置をとるかは、記載要件違反が適法な補正によって治癒できる可能性があるか否かに応じて決める。
審判請求書の副本を特許権者に送達する前の段階では、審判長は、請求の理由の要旨を変更する補正を許可することができない(特§131の2(3))から、審判請求書の副本を特許権者に送達する前の段階で記載要件違反を治癒するために請求書の要旨を変更する補正がされたとしても、審判長はその補正を許可できず、結果として記載要件違反は治癒できない。
したがって、著しい記載要件違反があり、それを是正するための補正をしようとすると、請求の理由の要旨を変更することが明らかな場合は 「不適法な審判請求であってその補正をすることができないもの」として、補正を命じることなく、また特許権者に答弁機会を与えるまでもなく、審決却下(特§135)をする。
他方、記載要件違反が比較的軽微なものであり、それを是正するための補正が請求の理由の要旨を変更しない可能性が高い場合は、補正命令(特§133(1))により補正の機会を与え、それに対する応答内容に応じて決定却下を検討する。