答案における日付の記載

先日も書いたように「問題文の文言(条件)を答案に書いて下さい」と伝えているのですが、受験生には中々伝わらない内容の一つです。

例えば、こんな問題があったとします。

平成23年3月に発明Xをした甲は、平成23年5月から製造を開始している。発明Xを独自にした乙は、平成23年6月に特許出願Aをし、平成25年10月に登録を受けた。

これに対する受験生の解答で多いのが

甲は、乙の出願時に発明Xを日本国内で実施をしているため、先使用権(79条)を有する。

とあっさりしたものです。
このような問題の場合、問題文に日時が記載してありますので、必ず日時を記載した方が良いと思います。少なくとも、

甲は、乙の出願時である平成23年6月に発明Xを日本国内で実施をしているため、先使用権(79条)を有する。

とは書けるでしょう。
もう少し丁寧に記載しても良いと思います。

甲は、平成23年3月に乙とは別に発明し、平成23年5月から実施をしている。したがって、乙の出願時である平成23年6月には日本国内で実施をしているため、先使用権(79条)を有する。

さて、受験生が答案に日付を書かないというのは

「問題文を読めば解るから」

という理由かも知れません。
しかし、「当たり前のことを当たり前に書く」のが論文試験です。
論文試験の答案は答案で完成してないと行けません。
問題と参照したら完成する、条文を見れば完成するでは、それは不完全答案なのです。

合格後の実務においても同じです。
例えば、拒絶査定不服審判の審判請求書には、手続の経緯を最初に記載します。

平成24年A月A日 拒絶理由通知(発送日)
平成24年B月B日 手続補正書・意見書提出
平成24年C月C日 拒絶理由<最後>通知(発送日)
平成24年D月D日 手続補正書・意見書提出
平成25年E月E日 拒絶査定(発送日)
平成25年F月F日 拒絶査定不服審判請求
平成25年F月F日 手続補正書提出

この時系列ですが、特許庁は当然把握しているはずです。
したがって、書かなくても解るはずなのです。
しかし、これは書く必要があります。
何故かというと、審判請求書だけで書類が完結している必要があるからです。

鑑定意見書を書くときもそうです。
G月G日に実施を開始したとか、細かく書きます。
クライアントから教えてもらった日付だから、書かなくて良いというものではありません。

結論として書類はそれだけで完結している必要があるのです。
弁理士試験の答案も同様の書類です。
答案だけで完結している必要があるのです。

合格後もそういう書類を作成します。
意外に論文試験の書き方は合格後に役に立つことも多いのです。
(というより、自分が合格後の実務スキルにリンクして書いてるだけですが)

慣れないとどうしても記載を省略してしまいます。
しかし、模範答案等は必ず記載が入っていると思います。
普段から忘れないように意識することで、答案が変わって来ます。