趣旨を何処まで記載するか

以前から良く受ける質問ですが、今週たまたま数人から聞かれましたのでお答えしたいと思います。

今回はゼミで課題を出している関係で、平成19年の秘密意匠の趣旨についての質問でした。
要するに、規定の趣旨をどこまで記載すべきかということです。
この、規定の趣旨を何処まで書くか?というのは受験生にとって悩ましい問題だと思います。

悩ましいからか、
「XXXって書いても良いですか?」
「XXXって書いたらどうですか?」
という質問をときどき受けます。
ただ、この質問は少しポイントがずれています。

例えば、秘密意匠の趣旨は「実施の時期と公開の時期との調整するための規定」といえば正解です。
間違いではありませんが、いつもこの記載で良いのかというと、その考え方は誤りです。
といって、一方は基本レジュメの趣旨(多いと10行以上あります)があります。
この趣旨をいつも書けば良いかと言われると、この考え方も誤りです。

この辺が解っていないと、答練で「記載が足りません」「書きすぎです」との指摘を受けます。

論文試験は、「他の受験生と同程度の記載をする」ことが一番重要です。
例えば、他の受験生が10行程度の趣旨を書いているとします。
その中で「青本にはこれしか書いてない!」と主張して2〜3行で終われば当然点数は付きません。

逆に、他の受験生が2〜3行でまとめているところ、自分が「基本レジュメの趣旨はこうだ!」と10行程度書いても、思った以上に点数はもらえません。

結局、他の受験生が書くなら自分も書くしかありません。
逆に、他の受験生が書いていないところは、薄く書くしかありません。

この厚く書くか、薄く書くかは、その論点の「問題における重要度」により変わります。
当該論点が重要であったり、直接的に聞かれているのであれば「厚く」書きます。
逆に、論点からずれていたり、とりあえず書く程度であれば「薄く」書きます。
この見極めが重要なのです。

この見極めは、やはり「経験」です。その為に答案は1枚でも多く書いた方が有利なのです。

明細書の記載も同じです。
総てを同じ厚さでは記載しません。
将来請求項を補正するために利用しそうなところは厚めに記載します。
分割出願を想定する場合も同様です。
権利行使を想定した場合でも、やはり該当箇所は厚めに記載します。

しかし、単なる限定解釈を避ける記載や、後願排除効を期待するだけであれば、そこまで詳細な記載は不要です。
薄い記載でも十分なのです。

明細書を厚くするか薄くするかは経験です。
誰かに教えてもらっても、必ず上手くいくものではありません。

論文試験の答案も同様です。
「厚く書くか、薄く書くかなんて教えてもらわないと解らないよ!」と受け身の人は合格後、明細書の記載で躓くと思います。明細書に正解は無いですから、誰も解らないのです。

こういう能力を高めるのも、論文試験の目的の一つだと思っています。