平成25年(行ケ)第10164号 審決取消請求事件

商標における不使用取消審判における審決取消訴訟です。
試験にはほとんど関係無い話です。
今回はたばこに関する争いです。
商標権者は「「PEARL」の欧文字と「パール」の片仮名を2段にして成り,第34類「たばこ」を指定商品とする商標登録」を有しています。
そして、この「パール」に対して不使用取消審判が請求されました。

使用している商品には、例えば「PIANISSIMO」という商標が大きく用いられており、商品パッケージには「パール」等の表示はありません。
しかし、広告の中で,「キラキラきらめく」「パールフィルター」等の表示がされています。

すなわち、たぼこにおいてフィルター部分について「パールフィルター」と使用している訳です。
特許庁は、「たばこのフィルターであれば、要部は「パール」となる。したがって使用している」と判断します。
原告(請求人)は、今回の商標は「PIANISSIMO」等であり、「パールフィルター」は自他商品等識別機能が発揮できる状態で使用されていないと主張します。

結論から申しますと、裁判所は、この「パールフィルター」について、商標を使用していると認めます。
しかし、単純な使用ではなく、メインの商標があり、その二次的ブランドであると結論づけます。
この二次的ブランドの場合、商標の同一性がどのようになるかを論じています。

被告は,そのブランド戦略からして,本件商品に「ピアニッシモ・スーパースリム・メンソール・ワン」との商品名を付し,「ピアニッシモ・ファミリー」と称される商品群に属する一銘柄として,「PIANISSIMO」の商標を強調するなどした上で,フィルターにパールのような光沢とつやのあるたばこである本件商品の特徴に由来する「パールフィルター」や「PEARL FILTER」という二次的なブランドも採用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,被告は,本件各広告において,「ピアニッシモ スーパースリム」「PIANISSIMO SUPER SLIM」ないし「PIANISSIMO」等を本件商品のメインブランドとして広告宣伝し,取引者及び需要者は,これらの商標によって,本件商品を他の商品から識別するものであるけれども,同時に,「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との標章も,本件商品の特徴を表す二次的ブランドとして,本件各広告に使用されたものと認められる

その上で、登録商標と使用商標との同一性を論じています。

本件広告A,B,C2及びD中の「パールフィルター」や本件広告C1中の「PEARL FILTER」のうち,「フィルター」ないし「FILETER」は,本件商標の指定商品であるたばこのフィルターを指す語であって,これをフィルター付きたばこに使用した場合,それ自体識別力
を有しない語である。
これに対し,「PEARL」の文字は,真珠という意味の英語であり,そのカタカナ表記である「パール」を含め,日本人によく知られている言
葉であるから,これをたばこという商品に使用した場合に,自他識別機能を有する商標となり得るものである。
しかし,前記イ認定のとおり,本件各広告においては,「パール」や「PEARL」は,本件商品の二次的ブランドである「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標の一部として使用されているにとどまるものである。「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標は,本件商品の二次的ブランドとして使用されているものである以上,取引者及び需要者はこれを一連一体のものとして認識し,把握するものであって,「パール」や「PEARL」のみを分離して認識し,把握するものではない。
したがって,本件各広告において使用されている「パールフィルター」ないし「PEARL FILTER」との商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできない。

商標が二次的ブランドとして仕様されている場合、商標は一連一体のものとして認識されるという結論になりました。

試験には当然出題されません。
ただ、受験生が考えている以上に、商標というのは機械的に判断が出来ないということです。