拒絶査定不服審判請求時の補正について

実務的に一つ気にある判例が出ているので、自分のメモ代わりにも。
平成26年02月05日、知財高判(平成25(行ケ)10131)です。

拒絶査定不服審判を請求し、同時に手続補正を行った場合です。
このとき、「拒絶査定と異なる拒絶理由」を発見した場合に、審判官はどうするべきか?という点が争点になっています。
出願人側は「拒絶理由を通知すべき」というのに対し、特許庁側は「独立特許要件違反となり、補正却下」の扱いをしています。

裁判所の判断は以下の通り。

審決は,補正発明は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項の規定により準用する特許法126条5項の規定(独立特許要件)に違反するので,特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものと判断した。特許法159条2項により読み替えて準用する同法50条ただし書には,「ただし・・・第53条第1項の規定による却下の決定をするときは,この限りでない。」とあり,53条1項の規定により補正却下の決定をするときは,拒絶の理由を通知することとはされていない。
そこで検討するに,平成18年法律第55号による改正前の特許法50条本文は,拒絶査定をしようとする場合は,出願人に対し拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないと規定し,同法17条の2第1項1号に基づき,出願人には指定された期間内に補正をする機会が与えられ,これらの規定は,同法159条2項により,拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも準用される。この準用の趣旨は,審査段階で示されなかった拒絶理由に基づいて直ちに請求不成立の審決を行うことは,審査段階と異なりその後の補正の機会も設けられていない(もとより審決取消訴訟においては補正をする余地はない。)以上,出願人である審判請求人にとって不意打ちとなり,過酷であるからである。そこで,手続保障の観点から,出願人に意見書の提出の機会を与えて適正な審判の実現を図るとともに,補正の機会を与えることにより,出願された特許発明の保護を図ったものと理解される。この適正な審判の実現と特許発明の保護との調和は,拒絶査定不服審判において審判請求時の補正が行われ,補正後の特許請求の範囲の記載について拒絶査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合にも当然妥当するものであって,その後の補正の機会のない審判請求人の手続保障は,同様に重視されるべきものといえる。
以上の点を考慮すると,拒絶査定不服審判において,本件のように審判請求時の補正として限定的減縮がなされ独立特許要件が判断される場合に,仮に査定の理由と全く異なる拒絶の理由を発見したときには,審判請求人に対し拒絶の理由を通知し,意見書の提出及び補正をする機会を与えなければならないと解される。これに対し,当該補正が他の補正の要件を欠いているような場合は,当然,補正を却下すべきであるし,当該補正が限定的減縮に該当するような場合であっても,当業者にとっての周知の技術や技術常識を適用したような限定である場合には,査定の理由と全く異なる拒絶の理由とはいえず,その周知技術や技術常識に関して改めて意見書の提出及び補正をする機会を与えることなく進歩性を否定して補正を却下しても,当業者である審判請求人に過酷とはいえず,手続保障の面で欠けることはないといえよう。
そうすると,審判請求時の補正が独立特許要件を欠く場合には,拒絶理由通知をしなくとも常に補正を却下することができるとする被告の主位的主張は,上記の説示に反する限度で採用することができない

引用元:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140207092845.pdf

判決は出願時(改正前)の法律で判断されていますが、現行法でも同じでしょう。
すなわち、拒絶査定不服審判請求時の補正については、独立特許要件違反だからといって、一律補正却下とせず、出来るだけ拒絶理由を通知すべき・・・と解釈して良いかと思います。

ちょっとだけ覚えておくと、将来的に何かのときに使えそうな気がします。
(なお、弁理士試験としては関係無いと思われます)