訂正請求について

訂正請求についてご質問があったのでお答えします。

特134条の2第2項で、二以上の請求項について訂正の請求をする場合、請求項ごとに訂正の請求をすることができる、とあります。
第6項では、その審判事件の先の請求は取下げ擬制、とあります。無効審判が1件なら、訂正の請求も1件だけということですか?

例えば、請求項a,b,cがある時、a,bについて訂正請求しました。後にcについても訂正の必要に気付いてしまいました。この時はa,b,cについて訂正請求する必要があるということでしょうか?

そもそも、訂正の請求は、特134条の2第1項に規定して有るとおり、必要に応じて行うことが出来ます。
一番最初の場面は、無効審判が請求され、その審判請求に対して答弁書を提出できるタイミング(特134条第1項)での訂正請求です。

さて、その後請求人が審判請求書を補正したとします。
答弁書の内容に基づいて審判請求書を補正してきた訳です。
この場合、審判請求書を補正した手続補正書の副本が被請求人に送達されます(特134条第2項)。

これに対して、被請求人は、再度答弁書提出の機会が与えられます(特134条第2項)。
新しい内容を主張しますので、このとき新たな訂正の請求を行います。
そうすると、先の訂正請求(特134条1項の対応するもの)と、今行った訂正請求が並存します。
この場合、後の訂正請求が被請求人の意図を良く表している(当然先の訂正請求の内容も含んでいることが多い)ので、後の訂正請求が有効と考えます。
この場合、先の訂正請求については、取り下げられたものとみなされるのです(特134条の2第6項)。

ご質問のように、新たな訂正請求について主張するのであれば再度訂正請求を行います。

請求項a,b,cがある時、a,bについて訂正請求しました。後にcについても訂正の必要に気付いてしまいました。

なお、この場合は、請求項cは無効審判が請求されていない請求項と思われます。
主体的に「あっ、cもまずい」って気がついている訳ですから。
したがって、請求項cについては訂正の請求について独立特許要件が課されます。
(多分質問者はそこまで意図していないと思われますけど一応)

訂正と補正は似ているのですが、訂正についてはかなり限定的なことしかできないという理解が必要です。

以下、発展的な補足なので、無視して頂いても問題有りません。

補足

受験生であれば、以下の様に新たな理由が発生した場合は訂正の請求を再度行う、訂正拒絶理由が来た場合は補正を行うといった理解で問題を解く上で問題ありません。

しかし、被請求人はこのように2つの対応が考えられます。

(1)再度訂正請求を行う
(2)先に提出した訂正を補正する(訂正請求書の補正+訂正明細書等の補正)

新しいことを請求人が主張して来た場合、それに応じてこちらも新しい答弁書を提出します。
このとき、新たな訂正があるのであれば、このタイミングで訂正請求を再度行っています。

しかし、「補正」という措置が取れないのか?という話が出てきます。
訂正明細書等の補正は特17条の4に規定してある期間内であれば補正を行うことが可能です。
特134条第2項の答弁書提出期間は特17条の4に規定がありますので補正が可能です。
また、訂正請求書については、要旨変更しないものであれば、特許庁に継続している限り補正が可能です(準特131条の2第1項、特17条第1項)。

時期的要件は満たしますので、問題は「訂正請求書の要旨の変更」に該当するか否か、ときに「請求の趣旨」が要旨の変更になるか否かです。

ここで、訂正請求における請求の趣旨の補正とは原則「訂正請求における添付明細書等の補正」となります(審判便覧30−01 3.(2)(e))。
したがって、このタイミングで先に提出済みの訂正請求書・訂正明細書等を補正するのはあまり得策ではないのです。

ここで、どういう補正が要旨変更に該当するのかは、試験の出題からは明らかに逸脱します。
したがって、受験生であればそこまで意識することはなく、上記説明(訂正の請求を行う)と考えてしまって問題無いと思います。