「こうでも良いんじゃないか?」という疑問について

Twitterで質問があったのでお答えします。

商標権消滅後において異議を申し立てられないのは何故ですか。例えば、放棄や後発的事由により消滅となった場合は対世効を有しているので、請求の要件を満たしていれば、これを認めてもよい気がするのですが。

条文上の根拠は無いのですが(敢えて言うなら、46条第2項に相当する規定が無いため)、一応そう考えることとなっております。
理由としては、商標権消滅後であれば、無効審判を請求すれば良いので異議申立てを認める理由も無いでしょう。
商標の場合、商標権が無くなれば第三者は使用出来ますし、出願も可能です。
そうなると、放棄等のあとに問題となるのは主に損害賠償であり、当事者間の争いで問題となります。
公益的見地から審査のやり直しという趣旨より、当事者間の紛争解決手段と考え、無効審判を使うと考えた方が妥当でしょう。

ここで、直前期において、注意事項を2つ程。
まず1つ目は、(直前期には限りませんが)「こういう規定でも良いんじゃないか?」と考えるのは不毛な場合が多いので極力避けるということです。
知財関係に関する法律は単なる取決めです。
そこに絶対的な理由は殆どありません。

実際、特許法30条と意匠法4条との違いが平成23年改正前はありました。
営業活動等で公知にした場合、意匠法と異なり、特許法では新規性喪失の例外の適用は受けられませんでした。
「意匠法と同様、特許法の新規性喪失の例外だって自己の行為に起因した公知行為については総て認めて良いじゃないか?」
と思っても、平成23年改正前はダメでした。その理由も丁寧に青本に記載がありました。
しかし、改正後はあっさりその立場は反対になります。
総て認めてしまうのです(あれほど青本に「だめ!だめ!」って書いてあったのに・・・)

このように、知財関係の法律は単なる取決めですから、「XXでも良いんじゃないか?」と考えられることはたくさんあります。
これが、試験迄数ヶ月ある状況であれば、色々と考える訓練にもなるのでよろしいかと思います。
そして、考えたことを忘れないからです。

しかし、試験直前の勉強ではこの時間はかなり無駄となります。
したがって、条文(ルール)は条文と覚え、正しい結論の出ない議論に力を使う必要は無いということです。