最後の最後の拒絶理由通知

最後の最後の拒絶理由通知って、どんな場合にくるか?という話がありましたので。
それほど神経質にならなくて良いのですが、一応説明しておきます。

例えば、電子辞書において、文字を入力して一覧表示する発明を出願したとします。
難しい技術ではないので、クレーム例で説明します(雑なクレームなのはご容赦下さい)

【請求項1】
 見出し語と説明情報とを記憶する記憶手段と、
 文字を入力する入力手段と、
 入力された文字と一致する見出し語を、前記記憶手段から検索する検索手段と、
 前記検索された見出し語と、前記説明情報とを一覧表示する表示手段と、
 を備えたことを特徴とする電子辞書。

このとき、「入力文字に基づいて、一覧表示する発明は従来からあるよ」として、29条1項、2項の拒絶理由が来たとします。
これが最初の拒絶理由通知です。
そこで、「重要度」に応じて一覧表示されるということを補正しました。

【請求項1】
 見出し語と説明情報とを記憶する記憶手段と、
 文字を入力する入力手段と、
 入力された文字と一致する見出し語を、前記記憶手段から検索する検索手段と、
 前記検索された見出し語に対応する説明情報から、重要度を算出する重要度算出手段と、
 前記算出された重要度が高い順に、前記検索された見出し語と、前記説明情報とを一覧表示する表示手段と、
 を備えたことを特徴とする電子辞書。

これに対して、審査官は「特許性あり」と心証を持ったようです。
しかし、「重要度を算出する」に引っかかったようで、「重要度を算出するのが、具体的にどのように算出するか不明確である」として、36条違反の拒絶理由通知<最後>がきました。

なお、この算出手段が不明確か否かは、実務的には審査官によってはOKの場合もあれば、NGの場合もあり・・・悩ましいところです。
したがって、このような場合、36条違反がくることを想定してクレームを作成しています。

さて、36条違反ですから、具体的に記載すれば万事解決です。
めでたく特許査定となります・・・・なるはずですが・・・

【請求項1】
 見出し語と説明情報とを記憶する記憶手段と、
 文字を入力する入力手段と、
 入力された文字と一致する見出し語を、前記記憶手段から検索する検索手段と、
 前記検索された見出し語に対応する説明情報から、当該説明情報の文字数に基づいて前記重要度を算出する重要度算出手段と、
 前記算出された重要度が高い順に、前記検索された見出し語と、前記説明情報とを一覧表示する表示手段と、
 を備えたことを特徴とする電子辞書。

ここで、うっかり色々クレームを考えているうちに「前記重要度」と、重要度の前に「前記」という言葉をつけてしまいました。
この「前記」が付いている「重要度」という言葉は初登場ですから、ここに前記が付くのはおかしいわけです。
ということで、この場合、典型的な「うっかりミスによる拒絶理由」がきます。36条違反です。
(厳しい・・・)

さすがに補正却下になることもなく、ただ補正によって生じた拒絶理由ですから
この場合の拒絶理由通知はまた<最後>がきます。
このように、最後が2回来てしまうのです。

ちょっと恥ずかしい拒絶理由通知です。
本当はあってはならないミスなのですが、うっかりミスでこういう場合はあります。
このような記載不備の場合、事前に審査官に原稿を確認してもらうことがあります。
そして、事前確認で「問題有りません」と言われた案件でもあったことがあります。
(この場合、審査官から「FAXで確認したとき気がつかなく申し訳無いけど、もういちど最後の拒絶理由をうつ」と連絡がきました)

しっかり確認をしなければいけないのは当然です。
しかし、ちょっとだけ、ちょっとだけ・・・「前記だけこっそり削除してよ〜」と思ったりします。
いや、勝手に削除してはいけないのは知っていますが、心情的に・・・です。

なお、自分の場合、こういう事案では事務所手数料は請求しないで処理をしています。