実施権者のモチベーション
特許権の訂正をするときの承諾を得る人(特127条)についてご質問があったのでお答えします。
このとき、理解すべき事は「実施権者」のモチベーションと、「訂正の効果」です。
「実施権者」のモチベーション
実施権者がどういう人達か?というのは一言で表す必要があります。
当然、「特許発明を実施出来る人」なのですがそれ以外です。
前に裁定通常実施権者は「実施したくて仕方ない人」という話をしました。
では、法定通常実施権者はというと・・・実はこの人たちは「特許権じゃまだなー」って思ってます。
先使用権者だって、特許権なんて本来は無い方が良いのです。中用権も同じです。
この「特許権じゃまだなー」って思っているのは裁定通常実施権者も同じです。
例外的に、職務発明の通常実施権者だけは違います。
この人は「俺に特許権くれよ」って思っています。
そうなると、特許権がなくなること、狭くなっていくことに異論は無い(むしろ万歳!)な人達です。
結論
そうすると、「特許権じゃまだなー」と感じている人に承諾を得る必要はありません。
しかし、専用実施権者、許諾による通常実施権者は勝手にされては困ります。
上述した職務発明の通常実施権者も本当は「特許権くれよ」って思っている人なので、困ります。
質権者が出てきませんが、上の話から当然「特許権に希望を持っている」人と解ると思います。
だから承諾が必要となります。
この考え方を持っていれば、特97条、特許権の放棄も同様の考え方ということが解ります。
「訂正をする場合は、5者の承諾が必要」と覚えるのも一つの勉強法です。
ただ「通常実施権者のモチベーション」という部分からしっかり理解していると、
- 規定を忘れても思い出せるという点
- 論文試験でもそういう気持ちで書ける点
から有利だとは思います。