商標「そのまんま東」は拒絶されるか?

Twitterで面白い発言があったので、それを題材に。
とある受講生さんが「そのまんま東は、そのまんまだから3条1項3号に該当するのでは?」と書いていました。

これを読んでどう捉えるかというところです。
ちょっと考えて見てから読んでください。




まず、「そのまんま東」は芸名なんだから、著名であれば4条1項8号該当でしょう。
と思った人。標準的な受験生です。
悪くはありません。ただ、標準的です。

これ、まず自分だったら「商品(役務)は?」って必ず確認します。
まずします。
絶対します。

商標は商品(役務)と関係が極めて重要です。
商標が苦手な人、点数が取れない人、共通しているのはこの意識が弱いことが多いです。
今回も、直ぐに4条1項8号が出てきた人はそういう傾向にあります。
商標はとりあえず「何の商品?」って気持ちが大切です。
受験生であれば、言われれば当たり前です。
「知ってるよ」「そりゃそうだよ」ではなく、文章を見た瞬間に「で、商品は何?」って思いついたかどうかです。
この気持ちは真っ先に思いついて欲しいのです。

「えっと、芸名だから8号だし、そもそも商品は?」でなく、出来れば「商品は?」から思いついて欲しいのです。
単純な事例の場合は良いのですが、複雑な事例だと忘れてしまうからです。

さて、「そのまんまだからかはともかく、3条1項3号に該当する可能性はある」と思いつく人もいると思います。
これはできる受験生です。
芸能人の名前(芸名)の場合、3条1項3号に該当する場合があるからです。

例えば、商標「安室奈美恵/AMURO」、指定商品「カレンダー、写真集、ブロマイド」は、3条1項3号、4条1項16号に該当し拒絶されています(不服平10-12917)。
審決では、

本願商標を指定商品中の「印刷物」に含まれる「カレンダー,写真集」や「写真」に含まれる「ブロマイド」について使用するときは,その商品が人気歌手の安室奈美恵に関する内容のものであることを表す文字とのみ取引者・需要者に理解されると認められるから,商品の品質(内容)を表示するものというべきであって,自他商品の識別する機能を果たしえない。

例えば、写真集に「安室奈美恵」と書いてあれば、安室奈美恵さんの写真集だと需要者は思うだけです。
また、仮に「安室奈美恵 写真集」と書いてあって家に帰って開けたら武井壮の写真集(あえて武井咲でもなく)だったら困るでしょう。
なので、芸能人の名前は3条1項3号、4条1項16号に指定商品との関係ではなる可能性があるのです。
そのまんま東さんの場合は、ちょっと難しいかもしれません。
しかし、3条に該当しないとは言い切れません。

いつもお伝えしているように、論文試験は如何に広く論点を記載するかです。
「芸名だから4条1項8号!」で終わってしまうと、項目落ちする可能性があります。
あらゆる可能性を検討し、保険的に論点を記載する必要があるのです。