カプコンvsコーエーテクモ

先週はカプコンコーエーテクモの訴訟の一件が大きな話題となっていました。

そもそも知財に関する報道は、弁理士とまでも言わなくても、少し勉強した受験生が見れば割と間違えていることが多いのです。

金額も大きいですし、今後何か情報があったら見ていきたいと思っています。
さて、この手の報道がされると、権利者である企業が逆に批判されることもあります。
よく見る意見について、弁理士から見た感想を書いてみたいと思います。

特許でお金儲けしようとするのはずるい

普通の人は、特許に対していくらコストをかけているかが解りません。
なので著作権と同じように、取得するのに低廉と考えている人も多いのでしょう。

特許は、出願するだけでも1件につき30万円程度。
権利化まで含めると、下手したら100万円程度かかります(不服審判や審取迄考えた場合)。
大きな企業であれば1件、2件の話ではなく、月に何十件、何百件と出願する場合もあります。それなりにコストがかかっている=努力をしています。

そもそも特許制度は何故あるのでしょう。
企業も開発に莫大なコストをかけています。
コストをかけて開発した製品は当然自社だけで実施したいと考えるのが当然です。
企業は慈善事業ではありません。

そうすると、独占する手段が必要です。
それが特許制度です。
その代わり、特許出願をすると発明が公開されます。
他社はそれを見て改良発明をし、より良い発明をすれば良いのです。

したがって、特許権はそれなりにコストをかけて得ている正当な権利です。
それを「みんなの技術だから使わせろ」というのは、まるでジャイアンのような理屈です。

今後、コストの関係から製造ラインは海外に多く移っています。
そうすると、日本メーカーは製造から、開発・研究にシフトして活動する必要があります。そうなると、知的財産は極めて重要です。

知的財産は、それなりにコストをかけているため、企業も努力されています。
また、発明を公開することによって技術に進歩に貢献もしています。
特許制度は良い側面もあるとご理解頂きたいところです。

みんなが知ってる技術で特許をとるのがおかしい

発明というのは「コロンブスの卵」のようなものです。
発明が完成した後に見てみると「誰でも思いつくじゃないか」と思います。
しかし、出願当初実際に思いついていなかった(少なくとも文献等で客観的に否定出来なかった技術)であることが多いのです。
普通の人が思うような、大発明(エジソンのような発明)はそうそう有りません。

本当に「思いつく」のであれば、なら先に出願をしておけば良かっただけです。
「こんなの簡単じゃないか」と思うなら是非特許出願をして頂ければと思います。
特許が取れれば、もしかしたらお金持ちになれるかも知れません。

何年も経ってから訴えるのはおかしい

知財戦略上ある程度時間が経ってから訴えると言うことはあります。
それは、早期に訴えてしまうと、容易に設計変更等をされてしまうためです。
特にソフトウェアの世界では、金型やラインもないですから仕様を変更する等、容易な話です。
したがって、相手に相当の売上げがあった段階で権利行使をすることによって有効な方策を取るという戦略もあります。
ただ、「だましうちじゃないか!」という考え方があるのは理解出来るところです。

何故問題となるのか

結論としては「そうはいっても」という気持ちが出てくるのです。
それはよくわかります。
特に日本は「権利があったら何をしても良い」という土壌ではありません。
権利行使の中には「嫌がらせ?」と思われるものもあります。

実際、企業も訴訟を嫌がることが多いです。
それは、勝っても負けてもイメージが悪くなることが多いからです。
だからといって、何もしないと知的財産の意味がありません。

今日本の特許出願件数は減っています。
その一つに、日本では権利行使がしにくい=知財を活用できないという一面があります。
結局苦労して特許権を取得しても、差止等で使うことが少ないからです。

それと比較し、中国では出願件数が増加し、訴訟リスクもかなり高くなっています。
日本企業は、頻繁に侵害で訴えられているのが実情です。

特許制度は悪者ではなく、日本の企業を守る制度です。
使い方は難しいと思いますが、それなりに意味がある活動であると一人でも感じて頂ければと、個人的には思います。