20-35-1について

ご質問があったのでお答えします。

意匠9条の20-35-1について、体系過去問を見ても何故Bに先願の地位が残ることが理由なのかわかりません(-_-;)
単に9条2項後段での、いずれも受けることができないという理由でいいように思うのですが。

当該過去問は以下の通りです。

甲の自ら創作した意匠イに係る意匠登録出願Aと乙のイに類似する自ら創作した意匠ロに係る意匠登録出願Bとが同日にあり、甲及び乙が意匠法第9条第2項の協議が成立しないことを理由とする拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達を受けた。甲は、これを不服として審判を請求したが、乙は、審判請求を行わなかったため、Bについての拒絶をすべき旨の査定が確定した。この場合、甲は、イについて意匠登録を受けることができる。

さて、この場合項は拒絶査定不服審判を請求しています。
権利化を希望(熱望)している訳です。
通常拒絶査定に不服があれば、拒絶査定不服審判を請求して査登録審決を求める訳です。

さて、本問の場合は、甲と乙とが同日出願により拒絶となっています。
この場合、先願の地位は残ります。

ここで、先願の地位とは何でしょう。
「同じ内容の意匠(特許)を出願しても権利は認めないよ。」
というものです。意匠権は独占排他権ですから、同じ権利の人が2人や、3人いても困るからです。
逆をいえば、2人以上いなければ問題有りません。
したがって、先願の地位は「登録」となるような出願(権利)が対象となります。
拒絶査定が確定すれば関係ありませんので、先願の地位はありません
放棄・取下げも同じです。

ここで、例外があります。
それは「同日出願で拒絶」された場合です。
同日出願についても、通常の拒絶査定と同様に「先願の地位がない」としたらどうなるでしょう。

例えば、4/1に甲と乙とが意匠イを出願します。
その後、7/1に丙が意匠イを出願します。
甲と乙とは同日出願のため拒絶査定。
ところが、丙の出願は、甲と乙との先願の地位がないとすると登録になってしまいます。
それはおかしな話ですよね?
そのため、先願の地位があります。

さて、問題に戻ります。
甲と乙とが同日出願をして拒絶となった場合、それぞれの出願は先願の地位が残ってしまいます。
仮に、甲だけが拒絶査定不服審判を請求したとしても、乙の出願については先願の地位がある、すなわち消えていない訳です。
この場合、甲がどう頑張っても、乙の出願があるために9条の拒絶理由は解消しないことになります。
したがって、登録になることはありません。

なお、質問者は「単純に9条2項で拒絶で良いのでは?」と考えています。
結論はそれで良いと思います。
しかし、拒絶理由については、本来は不服審判を請求すれば解消出来る可能性があるのです。
今回は乙の出願が残ったままになるため、その夢は叶わないという点を理解しておいて下さい。
なお、先願の地位のイメージも大切です。