請求項毎の訂正について

実用新案法の(14条の2)1項訂正について、請求項毎に出来ないのですかという質問やつぶやきを複数頂きました。

1項訂正については、請求項毎に認めてしまうと、請求しなかった請求項についてどうなるのか?(再度訂正出来るのか?)という点もあるため、権利毎に請求すると考えてもらっています。


ただ、本来はちょっと複雑です。
それは、訂正については、本来権利一体不可分の関係で、権利毎にしか出来ないというものです。これが元々の考え方です。

しかし、無効審判が請求項毎に出来ますので、それの防御手段である訂正請求については請求項毎に出来ても良いよね?って最高裁判例が平成20年に出ます。これにより、訂正の請求は請求項毎に可能となります。
請求項毎に出来ることによって、今度は一覧性の欠如という問題が出てきました。また、訂正の請求は最高裁判例が出たので請求項毎に認めましたが、訂正審判についてはやはり「権利一体不可分」という観点から、請求項毎に出来ないという流れでした。

この辺の規定を整えたのが平成23年法改正です。
平成23年改正本P.102には以下の記載があります。

平成20年最高裁判決は、訂正の請求のうち特許無効審判の請求に対する防御手段としての実質を有するものについては、請求項ごとに可分な取扱いを認める一方、傍論において、訂正審判については一体不可分として取扱うことが予定されているとの考え方を示した。また、特許庁も訂正審判については一体不可分として取扱う運用を継続している。したがって、特許無効審判における訂正の請求と訂正審判との間で、訂正の許否判断に関する取扱いに一貫性がなくなっている。

このように、訂正の請求と訂正審判との扱いを揃えたのです。
このとき、実用新案法については、規定を揃えなかったというのが実情です。

規定を揃えても良かったのでは?と考えるのは適切ではありません。
それを言い出したらキリがないからです(この辺は、もっともらしい理由はありますが、政策上のお話になります)。


「請求項毎に訂正できない!」となると、必ず直さないとダメなの?って考えてしまいますが、そういうわけでは有りません。
例えば、請求項1〜3のうち、請求項1だけ訂正したい場合は、請求項1を直して、請求項2、3はそのままコピーして記載します。
「訂正しなければいけない」というのは、必ず直せという意味ではなく、訂正する書類に全部書いてねというだけに過ぎません。
この書類上に請求項2〜3のコピーを記載するか、何も記載しないかの違いです。


なお、訂正の請求(訂正審判)の費用は請求項毎にしても、権利全体にしても費用は変わりません。特許の場合、「49,500円+請求項の数×5,500円」です。
この請求項の数が訂正する請求項の数ではなく、登録されている請求項の数です。
したがって、請求項が100個ある特許権であれば、
49,500円+100×5,500円=599,500円
かかります(特許庁に対する印紙代のみ)。

登録されている請求項の数ですので、請求項1つだけに訂正審判を行っても上記金額がかかります(請求項1個だけ削除するだけでも!)。
改正で変わりました(平成27年11月〜)