特102条1項について

侵害訴訟の判決文が上がっていましたが、102条1項についての規範があったので、一応転載。
平成28年6月1日 知財高裁(平成27年(ネ)第10091号))

102条1項について文言解釈をされているので、受験生の理解にも役に立つと思います。

(1) 特許法102条1項の損害
特許法102条1項は,民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり,同項本文において,侵害者の譲渡した物の数量に特許権者等がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,特許権者等の実施能力の限度で損害額と推定し,同項ただし書において,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものと規定して,侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより,従前オールオアナッシング的な認定にならざるを得なかったことから,より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。
特許法102条1項の文言及び上記趣旨に照らせば,特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは,侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品,すなわち,侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りると解すべきである。また,「単位数量当たりの利益額」は,特許権者等の製品の販売価格から製造原価及び製品の販売数量に応じて増加する変動経費を控除した額(限界利益の額)であり,その主張立証責任は,特許権者等の実施能力を含め特許権者側にあるものと解すべきである。
さらに,特許法102条1項ただし書の規定する譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が「販売することができないとする事情」については,侵害者が立証責任を負い,かかる事情の存在が立証されたときに,当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものであるが,「販売することができないとする事情」は,侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情を対象とし,例えば,市場における競合品の存在,侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),侵害品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴),市場の非同一性(価格,販売形態)などの事情がこれに該当するというべきである。

「販売することができないとする事情」って何だろう?って思うこともありますので、ご参考まで。