意匠法29条の2について

質問があったのでお答えします。

テキスト2のp90にある意匠29条の2第2号の1項各号はOKで2項はXと言う所でよく間違ってしまいます。
1項から2項から導き出せて行けるんじゃないか?っと何時も考えてしまい間違えてしまいます。1項各号の方の理由は分かるのですが2項で間違えなくて済む理由付けがないでしょうか?よろしくお願いいたします。

そもそも、この条文の要件ですが、最初は、拒絶査定の意匠登録出願に先願の地位がなくなったことから、「公知意匠と同一又は類似」のものについては保護を与える規定で出来たものです。

意匠法の改正時の報告書には、以下のように書かれています。

自己の意匠登録出願した意匠がその出願前に意匠登録されていない公然知られた意匠と同一又は類似している

 拒絶が確定した出願の全てについて、現行の意匠制度で認められている先使用による通常実施権を越える保護を認めることには理由がない。しかしながら、自己の出願前に意匠登録されていない公知の意匠と同一又は類似している場合には、その出願した意匠が拒絶されて、意匠登録されないながらも、出願した意匠の実施が後願に係る登録された意匠権の侵害として責任を訴求されることなく実施できるとの安心あるいは期待を抱くに足る事情も存する。

 以上のような事情を踏まえつつ、拒絶理由の該当条文次第で通常実施権の成立が左右されることは当事者間の法的安定性を損ねる恐れがあること、また、特許庁において全ての拒絶理由について審査することが効率性の観点から制約があることにかんがみれば、通常実施権の発生の要件として、自己の出願した意匠がその出願前に意匠登録されていない公然知られた意匠と同一又は類似しているとの規定を設け、通常実施権が認められる拒絶確定出願の範囲を限定しつつ、右要件を満たしていることを拒絶が確定した先願の意匠登録出願人が立証する必要があることを明らかにするものである。

要するに「公然知られた意匠と同一又は類似している」意匠については保護を与えるというものです。
これが立法段階(条文に起こす段階)で、「公然知られた意匠と同一又は類似している」という言葉を、立法テクニックとして「3条1項各号」と置き換えたものです。なので、そもそも3条2項という話にはならないところです。

そして「意匠登録されていない」という要件については、立法時になくなってしまいました。
しかし、「意匠登録されている場合はだめだよ」ということは、青本に記載があります。

わざわざ3条1項各号って書く必要は無かったのでは?というのは、注解意匠法でも指摘されているところです。
したがって、ここは「公知意匠に同一又は類似」と読み替えて理解した方が間違いは無いかも知れません。