質問について(条文の読み方)

質問があったのでお答えします。

自らイ公開→4月後、出願A(イ)→ Aから10月後、Aを基礎とする優先権主張出願B (イ、ロ)のケースで、Bで新喪例の手続を行う場合、Aで30条2項、3項をしていないと、Bでは出来ないのはなぜでしょうか?
特41条2項に30条2項の規定の適用は先の出願時にされたものとみなす、、とありますが出来ないようなので悶々としてます。。

特41条2項に記載されている”30条2項の規定の適用は先の出願時にされたものとみなす”はどう解釈すれば良いでしょうか。また、意に反するケースでは同項に30条1項があるので、14ヶ月後でも30条の適用ができることになりませんか?

特41条は、質問がちょこちょこあるところです。
で、個人的には41条のような条文は、まずは「原則」をしっかり理解することが大切です。
条文をどう読むか?というのは当然大切です。
しかし、それはレベル的にはもう少し先の話であって、まずは規定の理解が先に来ることが大切だと思っています。


いつも講義でも言っていますが、一番大切なことは、「試験で点数を取るようにする」ことです。
そして、「試験で解答できるレベル」に理解することが大切であって、それ以上は「趣味」になります。
みなさん、試験に合格することが最優先だと思いますので、まずは試験に合格出来る知識を身につけて下さい。
(解らないことを解消することだけが、正しい勉強法ではありません)

今回の質問については、そもそも新規性喪失の例外規定は「6月以内に(30条の)手続をして出願をする」ことが重要です。
もし、最初の出願で手続をせずに、優先権を使った出願の方で、いつでも手続ができるとしてしまうと、上記原則を逃れることになります。
すなわち、公知行為から基礎出願を6月以内に出願してしまえば、1年6月近く新喪例が使えることになる(手続をしなかった瑕疵を治癒できてしまう)ことになります。

平成23年以前は、新規性喪失の例外の適用については、基礎出願で30条の適用を受けていないと、優先権主張した出願では30条の適用は受けられませんでした。
必要以上に利益を与えないためです。昔は「子は親以上の利益を受けられない」という原則があったのです。

しかし、優先権主張した出願でも6月以内であれば、新規性喪失を改めて使ってもよいのではないか?となり、平成23年に運用の改正がありました。
したがって、基礎出願で30条2項の手続をしなくとも、後の出願で30条の手続をすればOKとなります。
ただし、必要以上に利益を与えないために、公知行為から6月以内に出願をする必要があるのです。


この、30条の特許出願をした日ですが、審査基準に説明があります。

4.3 各種出願における留意事項
「(要件1) 発明が公開された日から6月以内に特許出願をしたこと」を満たしているか否かの判断に当たっては、各種出願の「特許出願をした」日は、以下のように取り扱われる。
4.3.1 国内優先権の主張を伴う特許出願
国内優先権の主張を伴う特許出願に係る発明が、先の出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下この節において「当初明細書等」という。)に記載されている場合は、優先日(国内優先権の主張の基礎となった先の出願の出願日)である。
ただし、先の出願において「証明する書面」が提出されていない場合は、国内優先権の主張を伴う特許出願の出願日である。
また、国内優先権の主張を伴う特許出願に係る発明が、先の出願の当初明細書等に記載されていない場合も、国内優先権の主張を伴う特許出願の出願日である。

したがって、基礎出願で手続をしていないときは、後の出願の出願日が6月を経過しているか否かが判断されるということになります。
ここは、審査基準を理解すべきというより、冒頭に書いた「優先権の趣旨」等から理解することが大切です。

意外に条文だけでは読み切れないことがあります。
関連する箇所では、条文の読み方で質問が多いのは44条2項但書などです。

個人的には、これらの条文は、条文の文言というより、優先権の趣旨を理解し、優先権の趣旨から規定を理解した方が正確かと思います。
なお、自分もそのように理解していますし、これが冒頭に書いた「正解を出すための理解」ということになります。

と、この辺の規定は時間をかけて説明したとしても、最終的には「できない」という結論以上得られる部分がなく、
試験的に効率が悪いので、あまり深追いするべきところではない箇所です。
ただ、深追いすべきではないと解るので、質問することに意味があります。
質問は疑問点を解消するというより、試験的に押さえるべきポイントかどうかを理解するのに有効だからです。


なお、30条1項は2項と同じようには論じることはできません。
(そもそも意に反する公知の場合、基礎出願で30条の手続をしていません)