法上の役務

前も同じようなことを聞かれたのでここで回答しておきます。短答試験の平成16年第2問。「コンピュータの役務」が何で法上の役務ではないか?について。

すごくざっくり説明すると、商標法上「商品」や「役務」というのは「お金を払っているもの」です。これは、工業所有権法逐条解説(青本)の、P.1190に定義があります。

〈商品〉商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう。
〈役務〉他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう。

商品も「商取引の目的」となっているもの、役務(サービス)も「商取引の目的」となっているもの。だから、それぞれに「お金を払っています」。

例えば、「洋服の青山」でスーツを買えば、商品「スーツ」のお金を「洋服の青山」に払います。
「LEC」で講義を受ければ、「授業」という役務(サービス)に対してお金を払います。

さて、ここで、「ヨドバシカメラで20万円のPanasonicのパソコン」を買った場合、その代金は誰に払ったかと言えば、「Panasonic」に払ったのです。20万円のパソコンの代金はあくまでPanasonicです。ヨドバシカメラには1円も払いません。当然マージンがあるのですが、それはお客には関係ないことです。

これはデパートの話と同じです。「高島屋」に言って買い物をします。エレベータガールに案内されて、コンシェルジュに説明を受けます。もし、「高島屋」のサービスにお金を払っているのであれば、何も買わなくてもお金を払わないといけません。

すなわち、小売業というのは、商標法上の「役務」ではないのです。それじゃ困りますよね?ってことで、2条2項で別の規定が設けられたのです。この場合「便益の提供」(上に記載したような販売店でのサービス)も保護してあげようということになりました。「便益の提供」として保護されるのであって、「小売」自体は法上の役務とはなりません。

「お金を払っている」かどうかが、一つの判断基準になるかと思います。