不使用取消審判

答案を採点していて気になったこと。不使用取消審判の記載です。講義強調していなかったので反省ですが・・・

例えば、甲が商標イを、指定商品Aではなく類似する指定商品A’に使用している場合。この場合は禁止権の範囲の使用ですので、不使用に該当します。従って、50条の諸々の要件を満たせば不使用取消審判の対象となります。

そこで、答案に

甲は3年以上、登録商標の使用をしていないため・・・。

との記載する人が多いと思うのですが、これが正しいか否か?

条文に従って正しく書くのであれば、

甲は3年以上、登録商標を指定商品等に使用していないため・・・

と記載すべきです(50条参照)。そして、青本の「登録商標」の説明には、以下の様に記載されています。

この定義から導かれる結論は、商標登録があった商標は商標権者が使用するときはもちろん、他の何人が使うときでも登録商標であり、また、指定商品又は指定役務に使うときはもちろん、指定商品以外の商品若しくは役務又は指定役務以外の役務若しくは商品に使うときでも登録商標だということである。例えば、Aという商標について商標登録があったと仮定すると、このAは何人がいかなる商品若しくは役務について使用をするときでも登録商標の使用をするということになる。ただし、これが侵害になるかどうかは25条等の規定から導かれる問題であって、この定義のみから直接に導かれるものではない。(青本P.1189)

これを読むと、禁止権の範囲であっても登録商標の使用には違いありません。したがって、正確に「登録商標を指定商品等に使用していない」と書くべきだと思います。

しかし、今度は50条の青本の解説を読むと、さっくり「登録商標の不使用による」って書いてあるんです。解説を通して「登録商標の不使用」。だから、それでも問題なさそうなのですが、青本の場合、この記載は本当に使っていない場合を書いているのだと思います。

更に青本を読むと、

指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務について使用をしたり、登録商標に類似する商標の使用をしても本項の適用を免れることはできない。商標権のうち禁止権に係る部分つまり類似部分の使用は、権利としての使用ではなく事実上の使用であるから本条の意図する登録商標の使用義務を履行しているとはいい難いので、その部分の使用をもって不使用取消を免れることはできないこととしたのである。(青本P.1379)

と記載があります。そうすると、禁止権の範囲であっても「登録商標を使用」していると言えるのだと思います。

本試験でどれほど厳密に採点されるか解りません。しかし、どこか一箇所は条文に従って「登録商標を指定商品等に使用していない」と記載すべきですし、口述試験ではそのように答えるべきだと思います。