H23−53(意匠法)の微妙な枝

短答の過去問ですごい微妙な箇所が今あります。新規性喪失の例外の適用についてです。

[23-53-4]意匠法第4条第2項(新規性喪失の例外)の規定の適用を受けた意匠登録出願について、補正の却下の決定の謄本の送達があった場合、その補正後の意匠について新たな意匠登録出願をするときは、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けることができる。

割と新しい問題です。特許庁の回答は「×」です。理由としては「補正却下後の新出願については、4条の主張を出願と同時に手続をすることが出来ない(出願日は手続補正書提出したときのため)」からです。

同じような問題としては、特許法の分割出願等において、親出願で新規性喪失の例外の適用を受けていない場合、子出願で新規性喪失の例外の適用は受けらるか?という話があります。これは、「親出願以上の利益は子出願は受けられない」という理由から不可とされてきましたが、平成23年改正法対応の出願人の手引きP.14の記載から可能と変わっています。

また、原出願に際して手続を行っていなかった公開された発明については、発明の公開日から 6 月以内に分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願をして手続([2.]の(a)〜(c))を行えば、第 2 項の規定の適用を受けることができます。

それでは、意匠法の補正却下の新出願において、公開時から6ヶ月以内であれば新規性喪失の例外の適用を受けられるでしょうか。例えば、補正却下後の新出願の前(具体的には、手続補正書提出前)に公知行為があった場合、新出願において4条2項の適用を受けられるかという問題です。特許法の運用が変わっているのですから、意匠法も変わってそうな気がしませんか?

この点、以前特許庁に電話して確認したところ「可能である」との回答でした。「公知行為から6月以内に出願してくれれば問題ない」とのこと。従って、17条の3の出願に対して4条の主張が出来るというのが今の特許庁の回答でした。したがって、平成23年の過去問は「○」の可能性があるということになります。

さて、改正ですか、なるほどと思う訳ですが、一つ問題があります。この点について「根拠」が書面ではないということです。電話で聞いただけですので、今後「言った」「言わない」という状態になりかねません(条文上は確かに適用できないと考えてもおかしくないからです。)
意匠の新規性喪失の手引きも公開されましたが、この点全く触れていません。来年この箇所が出題されるとは考えにくいですが、ちょっと悩ます状態になっているかな?と考えています。

ちなみに、唯一根拠(?)という程ではないですが。インターネット出願ソフトのエラーメッセージのページにヒントはあります。

V1AHHB1641P-E
特記事項の組み合わせに誤りがあります

対処方法
【特記事項】に記載する主な条文の組み合わせは以下の通りです。
◆特許願
 分割、変更、実用新案登録に基づく特許出願 のいずれかと、
 新規性喪失の例外、及び、外国語書面出願 が併記可能です。
◆実用新案登録願
 分割、変更 のいずれかと、
 新規性喪失の例外 が併記可能です。
◆意匠登録願
 分割、変更、補正却下後の新出願 のいずれかと、
 新規性喪失の例外 が併記可能です。
◆類似意匠登録願
 分割、変更、補正却下後の新出願 のいずれかと、
 新規性喪失の例外 が併記可能です。
◆商標登録願/団体商標登録願/地域団体商標登録願
 分割、変更、補正却下後の新出願 のいずれかと、
 出願時の特例 が併記可能です。
◆防護標章登録願
 併記はできません。
 変更か補正却下後の新出願 のいずれか1つのみを記載してください。
リンク元:http://www.pcinfo.jpo.go.jp/docs/error/V1AH/V1AHHB1641P-E.html

これによると、「補正却下後の新出願」と「新規性喪失の例外」について、特記事項に併記出来ることとなっています。ということは、「補正却下後の新出願」において、4条の適用を主張することが可能と言えるのではないでしょうか?


この箇所は非常にグレーなのですが・・・一応注意しておいて下さい(といいつつ、特許庁から明確な書面で出てこない以上、いくつあるか問題で出されたら、対応の取りようがありません)

(2015年8月段階で実務上そういう手続をした場合、認められないとの回答があったようなので削除します)