問題の解き方について

11月25日付けのブログのコメントに質問を頂いたのですが、コメント欄が長くなりすぎるのでこちらで回答します。

馬場先生はじめまして。前記の人と似たような疑問があります。去年の短答試験は過去問題を中心に勉強して37で今年は条文素読中心で27でした。短答試験はもう5度受験して一度も通過していません。先生のブログで何度か登場してくる「正誤判断の道筋」ですが、条文を暗記していないと直感に頼るか、一般常識で正誤判断するしかありません。

受験生(受講生)にありがちなのですが、Aという方法があった場合、その方法が「普遍的に利用出来る」魔法の方法と感じることです。
これは受験生に限らず、例えば株式の必勝法(チャートから株価予測をしたり、指標から為替相場を予測するもの)にもそうですし、例えば競馬の必勝法等でも同じです。

古今東西、絶対的な「必勝法」「攻略法」に皆さん目が移ってしまいます。ただ、なかなか「これだ」という方法は難しいのでは無いでしょうか。

例えば、自分は講義やガイダンスにおいて「条文を暗記する必要は無い」といっていますが、それは「何も覚えなくて良い」という訳ではありません。「暗記をしよう」ということではなく、「普段から繰り返し学習する」ことにより自然と覚えていくという話です。

例えば、条文から趣旨から全く忘れてしまった、覚えていなければやはり問題を解くことは不可能だと思います。しかし、その道筋、結論に至るプロセスを普段から考えることにより、試験のとき「ど忘れ」したことに対処出来るのだと思います(全く暗記してないことを、一から回答するのは、よっぽどの天才じゃない限り難しいと思います。

また、正誤判断を自分なりに考えたとしても、答えを知っているのでそれに合うように道筋をこじつけてしまいます。例えば、H19-60-4の枝ですが、甲社が、乙社の製造販売する製品は甲社の登録実用新案を侵害する旨、実用新案技術評価書を提示して警告したところ、乙社が実用新案登録無効審判を請求し、甲社は実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする訂正をした。この場合において、乙社の製品が訂正後の登録実用新案を実施するものであるときは、甲社は実用新案技術評価署を改めて、提示することなく権利行使をすることができる。
ですが、減縮訂正だから、改めて提示する必要はないと筋道を立てましたが、間違えました。

そもそも、警告が要件となる場面として、実用新案権の権利行使の場面と、特許法における補償金請求権の場面とを混同しているためにこのような理屈になってしまっているのだと思います。

実用新案法の趣旨は何でしょう?早期権利化です。早期権利化を実現するために、無審査登録主義が採用されています。したがって、補正/訂正等が行われたとしても、権利が有効か否かが不明な訳です。

そうすると、実用新案権が減縮を目的とする訂正(いわゆる1項訂正)がされた場合、この訂正自体が有効か無効かが不明です。その為、訂正後についても技術評価書の請求、提示が必要となります。それは有効な権利であるか否かを評価するためです。
「範囲が減縮された場合に再度警告が不要である」というのは、特許法の補償金請求権時に用いられる考え方です。これは、第三者に不測の不利益が生じないという趣旨からです。

また、これ以外にも警告が要件となっている規定が四法にはあります。それらとの対比等を行うことも重要だと思います。
この辺の事項までは解説には書いていませんので拾ってくるのは難しいかと思います。青本なりで理解を深める、ゼミなど利用しているのであれば、指導講師に質問する等の対応を取られる対応がよろしいかと思います。

条文の素読は重要ですが、何処の要件が過去問で問われているのかという視点で読まれると理解が深まると思います。