先使用権の考え方

割と先使用権の質問って多いです。先使用権自体難しく無いのです。一言で言えば、

出願前から実施(使用)している

この状態があれば、先使用権が認められます。
当然細かい要件はありますが・・・まず基本をしっかり押さえます。基本は、「先に使ってた!」ということです。
そう考えると、混乱しなさそうなのです。しかし、かなりの割合で混乱する人が多いのです。何故かというと、「考え過ぎ」てしまうのが原因です。

考え過ぎというのは、多くの人が

「先使用権」=「法定通常実施権」=「実施権」

という流れで考えます。これ自体間違いではないですし、理解としてあっています。しかし、「通常実施権」の一つと考えると、しっくりこないことも多いのです。
先使用権が登場する場面の殆どが侵害の場面です。特許権者から「侵害してる!」と言われて、初めて「俺の方が先だし」と言い返す訳です。
この「俺の方が先」って言い返す、すなわち「抗弁」として利用される場面が殆どです。

そもそも、通常実施権というものは

特許権者に「侵害してる」と言わせない権利

なのです。ここが、積極的に実施できる「専用実施権」とは異なります。だから、通常実施権は「許諾」と表現します。許諾は、禁止されているものを許す(解除する)という法律用語です。
「専用実施権」と「通常実施権」とを同じレベルで考えていると混乱します。単なる独占的なのか否かという違いでは無く、本質的に異なると考えた方が良いと思っています。

さて、先使用権に話を戻します。このように、特許権者から何か言われたときに初めて主張することが多いのが先使用権です。通常実施権という権利と捉え、かなり細かいことまで考えて混乱する人が非常に多いのです。

個人的には、先使用権は通常実施権として規定するより、104条の3みたいな規定の方がしっくりくると思っています(といっても仕方ないですが)。