任天堂「わらわら広場」に対する登録異議申立

細かい内容もわからないですし、実際はどのような形式で話が進んでいるかわからない上で。
ニュースサイトを見ると、任天堂による「わらわら広場」という商標が登録され、当該登録商標に対して居酒屋「笑笑」を運営しているモンテローザが登録異議申立を行ったらしいです。

調べてみると、第5569961号として「わらわら広場」は登録になっています。これに対して無効審判ではなく、登録異議申立が行われている前提として少し考えて見ます。
なぜこの点に触れようと思ったかというと、商標系のニュースの場合、何故かいわれの無いバッシングが起きるのに気になったからです。

今回モンテローザ社が行ったことは「登録異議申立」です。商標法43条の2です(受験生なら常識です)。
「登録異議申立」の趣旨を一言で表すと「公益的見地から登録処分の見直し」です。すなわち、「私益的見地による紛争解決手段」による無効審判とは異なります。

「この商標、登録されるのはおかしくないですか?」

と、特許庁に再度審査をしてもらう制度です。登録異議申立は公益的見地から行われるものですから、利害関係は必要ありません。したがって、モンテローザ任天堂とが競合するか否かという点は、原則必要がないのです。
また、登録異議申立制度は、「審査のやり直し」を促す制度です(実際は、審判官による審理になります)。したがって、直接任天堂モンテローザが対決するという構造にもなりません。あとは、特許庁が粛々と審理をしていくことになります。

したがって、異議申立を行うこと自体、特に問題は有りません。

さらに、商標管理上、商標は「いいよ、いいよ」ではなく適切に管理する必要はあります。

例えば、今後モンテローザが笑笑好きな人があつまる「わらわら広場」という会員制コミュニケーションの場をインターネット上で展開するかも知れません。そうすると、今回の登録商標については、指定役務に「インターネットの電子掲示板を用いたプロフィール・日記等の個人に関する情報の提供,インターネット上でのウェブサイトを通じたソーシャルネットワーキングユーザー向けの友達探し及び紹介のための情報の提供,インターネットを用いた友人として交流を希望する者への友人の紹介」等があります。このような指定役務により、モンテローザ側が今後、このような事業展開の場合に制約が出るかも知れません。
また、指定商品「トランプ」について、グッズ展開等において影響が出るかもしれません。

商標権は更新可能で有り永久に使用可能です。1年、2年後ならともかく、10年後、20年後にはどのようなサービスを展開しているか解りません。したがって、自社のブランドを守るために、色々な対策を講じることは商標管理上重要だと思います。

「笑笑」と「わらわら広場」とが類似しているとか、混同を生じるとか言っているのではありません。「わらわら」という言葉自体には、「散り乱れるさま。ばらばら」(広辞苑 第6版)という意味があります。一方「笑笑」は「笑う」という意味の漢字を重ねた造語と思われます。そう考えると、非類似と考えることも出来ます。

しかし、上述したように、今後「笑笑広場」というビジネス展開をするかも知れません。また、任天堂の「わらわら広場」も今後のビジネス展開では著名商標になるかも知れません。知的財産権は権利期間が長いため、今後はどのようになるのか解らないのです。

どちらにせよ「登録異議申立」をすることは制度を適切に使っている訳です。それに対して第三者が「おかしい」というのは少し違うと個人的には感じています。