国内処理基準時とは?

今年PCTの出題も多かったですし、184条を苦手としている人が多いので、一つそこの話題でも書きます。
「国内処理基準時」って、何か説明出来ますでしょうか?これは、特許法184条の4第6項に規定されています。

6 第1項に規定する請求の範囲の翻訳文を提出した出願人は、条約第19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内書面提出期間が満了する時(国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時。以下「国内処理基準時」という。)の属する日までに限り、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文を更に提出することができる。

と、この規定を使えば説明出来ます。青本もほぼその説明なのですが、そもそも「国内処理」の「基準時」というのが何か?という説明が意外に見当たりません。この184条の4第6項の規定は国内処理基準時の「期間」を規定しており、具体的にこれが何の期間なのか?というのがいまいち釈然としません。

これは、PCT23条(40条)の規定から作られている言葉です。

PCT 23条(国内手続の繰延べ)
(1)指定官庁は、前条に規定する当該期間の満了前に、国際出願の処理又は審査を行つてはならない。
(2)(1)の規定にかかわらず、指定官庁は、出願人の明示の請求により、国際出願の処理又は審査をいつでも行うことができる。

翻訳文を提出出来る期間の間は審査等を行ってはならないというPCTの規定があります。この審査等=国内処理であり、この国内処理が出来る基準が翻訳文を提出出来る期間の経過時です。したがって、国内書面提出期間だけではなく、184条の4第1項に規定する翻訳文提出特例期間がある場合は含まれます(翻訳文が提出出来る期間だからです)。
そして、6項のかっこ書きが、PCT23条(2)に対応しています。審査請求があった場合は、ここから国内処理(審査等)を行えるということになります。

このように国内処理基準時も暗記しようとすると意外に要件(翻訳文特例期間)が落ちたりします。しかし、そもそも国内処理基準時が何か?をしっかり理解していれば、忘れにくくなると思います。

このように、条文に疑問を持って読んでもらえると、色々と理解が深まると思います。