今年の商標法の論文1問目から

今年の商標法の1問目を読んだとき、非常に良い問題だと思いました。良い問題というのは、自分がいつも話している内容です。

商標法第1条の趣旨を簡潔に述べた上で、同条から導き出される商標権者の義務について説明し、それらの義務が果たされていない場合の商標権者が受ける可能性のある不利益について述べよ。

特実意商について、1条の目的条文は試験に出ません。試験に出ませんが、非常に重要なのです。普段勉強をしているとき、条文を読むとき、問題を解くとき、頭の片隅で必ず意識して欲しいところです。

普段からこの練習をしておくと、本番のとき「解らない」問題が出ても何とか答えを導き出すことが出来ます。
中には審判手続の細かい要件とかは確かに1条からは導き出せません。
ただ、みなさんが悩む条文の多くについては、1条、もっと言えば法目的からストーリーを作る事ができます。
したがって、普段から強烈に意識して学習して欲しいのです。

実際講義でもわからないときは「そもそも意匠法って・・・」というところからスタートして質問することが多いです。そうすることによって、総ての条文を関連づけて理解して欲しいと考えているからです。すなわち、条文にはストーリーがあるのです。

日本史の好き嫌い

唐突ですが、日本史って好きでしたか?
理系の人は「嫌い」な人が多いと思います。日本史が嫌いな理由は「暗記である」と考えるからです。
しかし、好きな人からみると歴史というのは総て流れがあってストーリーがあります。

例えば、平安時代に「鹿ヶ谷の陰謀」という事件がありました。
これを歴史が苦手な人は「1177年に起こった後白河法皇と平家の対立による事件」という暗記をしようとします。だからつまらないし、点数が取れません。

日本史が好きな人は、そもそもこの事件が何故起こったのか?を考えます。そして、この陰謀によってその後どうなったのかを考えるのです。この後、院と平家の対立が激化し、院の勢力がそがれていきます。それは今度は平家以外の武家勢力の台頭につながり、鎌倉幕府に流れが移っていきます。
この「流れを理解する」という作業が日本史は非常に重要です。
これが出来ないと無味乾燥な知識の暗記になりがちです。

さて、弁理士試験に置き換えます。
そうすると、各条文の流れを見ているか?という疑問が生じます。
例えば商標であれば、不使用取消審判であれば50条の条文を覚えて、要件を確認し、趣旨を暗記して終わりではないでしょうか?
そもそも、何故不使用取消審判があるのか、それによってどういうメリットがあるのか、商標法の法目的にどうつながるのか?そう言った点を普段から意識して勉強しているか否かです。

そういうことを考えながら勉強すると、各条文のつながりが見えてきます。
自分はそういう勉強法が、少なくとも「暗記が苦手な受験生」にとっては良い学習法だと思っています。

条文やレジュメが暗記出来る人は暗記しても効果は出ると思います。
ただ、自分は暗記が苦手ですので、このように学習をしていますし、講義でもそのように話をしています。
暗記を「0」にすることは出来ませんが減らすことは可能です。

講義で質問されるなら考えられます。自分でやるのはなかなか難しいです。
しかし、ちょっとだけでも「この規定って何であるんだろう?」と考えて見てください。

追記

あと一言だけ補足しますと、受験生の人は概ねまじめ過ぎます(笑)
例えば、不使用取消審判について、何故あるのか?一言で答えてと聞くと意外に答えられません。
これが、「不使用取消審判が設けられた趣旨について」と聞くと、答えられるのです。
でも、簡潔に「なんで?」と聞かれると答えられないのです。

これは「レジュメを暗記」しているのであって、制度を理解しているのでありません。
この辺については、実は口述試験で困ったりします。

まじめ(優秀)な受験生程多いタイプです(頭では解っているけど答案にかけないって人がこのタイプです)