条文を縦横に理解する

いつも条文を理解しましょうと言っていますので、その中の一つ。
条文を理解するときは「一方向」ではなく、「多方向」から理解して欲しいということです。
「条文クロスワード」というか、まさに縦横から判断して欲しいのです。

例えば「専用実施権」(専用使用権)とは何でしょうか?
簡単に言えば「独占排他的に特許発明を実施出来る権利」です。これが一方向の学習。
殆どの受験生が知っているのですが、ちなみに違う方向からみるとどんな規定でしょう?
多分受験生に聞いても返ってこないでしょう。
何故か?それ以外に意味が無いですし、レジュメに載っていないからです。

しかし、ちょっと考え方を変えてみましょう。
そうすると専用実施権は「実質的に移転しちゃう」権利なのです。
こんなざっくりとした考え方は通常しないのですが、そもそもそんな権利なのです。
実質的に移転しちゃう権利=専用実施権。

そうすると、移転の制限がある規定については、同様に専用実施権も設定出来ないのです。
何故か?実質的に移転になるからです。

本意匠と関連意匠とは分離移転が出来ません。したがって、専用実施権も別に設定出来ません。
商標法4条2項、地域団体商標は原則として移転(正確には譲渡です)が出来ません。
したがって専用使用権も設定出来ません。
特許法には移転の制限規定がありませんので、専用実施権の制限規定もありません。
しかし、共有に係る特許権の持分移転が同意が必要です。したがって専用実施権の設定も同意が必要です。
この辺は「専用実施権は実質的に移転だから、移転禁止されてもいいもんね」と脱法的に防ぐ意図もあります。

このように条文を理解するときは、一方向ではなく複数の視点から見ると忘れなかったりします。
移転の規定と専用実施権の規定とを同じに覚えれば、覚える量はほぼ半分で済むわけです。
また、移転の制限を学習したときに専用実施権を復習し、専用実施権を学習したときに移転の制限を復習すれば2倍勉強出来る訳です。

「商標法4条2項の移転の制限はもっと細かい規定があるじゃないか!」と思う人もいるでしょう。
当然細かい規定は追々押える必要は有ると思います。しかし、まずざっくりとした理解がなく、細かい知識ばかり詰め込んでも結局忘れてしまっては意味が無いと思います。

自分は語呂合わせを使ったりはしませんが、このように工夫することで覚える量を減らし、記憶の定着率を上げることは出来ると思っています。