普通に用いられる方法で表示する標章

先週は登録商標「ほっとレモン」(登録第5427470号商標)の裁判例がニュースになっていました。

登録商標は以下の通りです。

ここで、一つだけ言いたいことがあるのですが、それは、この商標が3条1項3号に該当していると判断されていることです。

受験生ですと「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」=「標準文字」に近い状態を想起し、「3条に該当しないのでは?」と感じますが、このような商標でも3条1項3号に該当することはあります。

商標法は特にケースバイケースで判断されることも多いため、「画一的に判断出来ない」という点を理解しておいて下さい。その上で、受験勉強としては「条文の言葉」で回答することが墓穴を掘らないコツです。
例えば、口述試験において、3条1項3号(1号とかも)の商標を「標準文字のような商標です」と答えてしまう人がいます。
そうすると、「それ以外は該当しませんか?」という余計な突っ込みが入ることになります。
それを防ぐためにも、条文に忠実に回答することが大切です。

なお、論文試験の答案でも、余計なことを書かないのがポイントになります。
(勉強が進んでいる受験生ほど、つい書いてしまったりします)

論文試験では便利な魔法「場合には」を唱えましょう。

商標Aが、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当する場合には、3条1項3号に該当し・・・

これで解決です。
論文試験は綺麗に書く必要はありません。


判決文(参考)

参考までに判決文を以下に記載しておきます。

2 商標法3条1項3号該当性についての判断(取消事由1)
(1) 本件商標の構成等
 本件商標は,別紙商標目録記載1のとおり,本件文字部分を上下二段に横書きし,これを本件輪郭部分で囲んだ構成からなり,これらの文字と輪郭線とを同じ赤系色で彩色したものである。
 本件文字部分のうち,片仮名「レモン」部分は,指定商品(第32類「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」)を含む清涼飲料・果実飲料との関係では,果実の「レモン」又は「レモン果汁を入れた飲料又はレモン風味の味付けをした飲料」であることを意味し,また本件文字部分のうち,平仮名「ほっと」部分は,上記指定商品との関係では,「熱い」,「温かい」を意味すると理解するのが自然である(上記1(3)及び同(4)参照)。また,本件輪郭部分については,上辺中央を上方に湾曲させた輪郭線により囲み枠を設けることは,清涼飲料水等では,比較的多く用いられているといえるから(上記1(6)参照),本件輪郭部分が,需要者に対し,強い印象を与えるものではない。さらに,「ほっとレモン」の書体についても,通常の工夫の範囲を超えるものとはいえない。
 この点,原告は,「ほっと」は,「人をほっとさせる」「人がほっとしたいとき」を意味し,「温かい」を意味するものではないかのような主張をする。しかし,?「温かいレモン風味の味付け等をした飲料」を総称する名称(称呼)としては,「ほ」「っ」「と」「れ」「も」「ん」があり,それ以外の名称(称呼)を一般的に確認することはできないこと,?「温かいレモン風味の味付け等をした飲料」としての「ほ」「っ」「と」「れ」「も」「ん」の表記は,「ホットレモン」のみならず片仮名と平仮名の組合せである「ほっとレモン」も用いられていたこと(上記1(3)参照),?「レモン」以外の果実等の風味を付加し,温かい状態で飲まれることを想定した清涼飲料水等においても,平仮名「ほっと」の文字が使用される例は,少なくないこと(上記1(4)参照)等に照らすならば,原告の上記主張を採用することはできない。すなわち,本件に現れたすべての証拠によるも,本件商標について,「熱い」,「温かい」との観念が生じることを否定する事実は認められない。
(2) 小括
そうすると,「ほっとレモン」との文字及びそれを囲む輪郭部分の組合せからなる本件商標は,本件商標の指定商品(「レモンを加味した清涼飲料,レモンを加味した果実飲料」)との関係では,商標法3条1項3号所定の「商品の・・・品質,原材料・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するというべきである。