通常使用権の混同による消滅について

ちょっと今週末は多忙なため簡潔に。
試験から逸脱していると思いますので、そのつもりで。

専用使用権(専用実施権)は特許権者と同一人物になった場合に混同により消滅します。ここで、通常使用権(通常実施権)は混同により消滅するのか?という質問がありました。

まず、特許法等についてはそもそも通常実施権自身が、今は単なる許諾を有している権利に過ぎないため、あまり検討することはないと思います(当然対抗要件を具備するか否かという論点になり、混同とは別の議論にもなりそうです。訴訟等で争っていくことになるでしょう)。

さて、商標法における(登録された)通常使用権について。
受験機関では、通常使用権(通常実施権)については混同により消滅しないとの解釈があります。理由は、準特98条に通常実施権の規定が無いため(条文上に根拠がない)ということだと思います。
これは、98条の規定がそもそも「登録の効果」の規定です。通常実施権(通常使用権)は登録は第三者対抗要件に過ぎず、効力発生要件では有りません。

では、「登録」されていた専用実施権(専用使用権)がどういう根拠で消えるのでしょうか?
こういう登録に関する関係は、特許登録令に規定があります。
その中でも、混同による消滅は、施規則である特許登録令施行規則34条に規定があります。

第34条(混同又は取消しによる専用実施権等の消滅の登録の方法)
1 混同による専用実施権、仮専用実施権又は質権の消滅の登録をするときは、その専用実施権、仮専用実施権又は質権の登録を抹消しなければならない。

この規定により、専用実施権は混同による消滅にって、専用実施権の登録が抹消されます。
抹消についてはこちらに規定があるので、特許法98条から除外されています。
ちなみに、特許権の消滅も除かれていますが、こちらも特許登録令施行規則32条により抹消されるため、特98条から除外されています。

さて、商標法ではどうなっているかというと、商標登録令施行規則17条により特登令施規則が準用されています。

第17条(特許登録令施行規則の準用)
4 特許登録令施行規則第14条(第3項を除く。)、…、第34条第1項、…の規定は、商標に関する登録の手続に準用する。この場合において、…同規則第34条第1項中「専用実施権」とあるのは「専用使用権、通常使用権」と読み替えるものとする。

この商登令施規則17条第4項によれば、特登令施規則の準用のときに「専用使用権、通常使用権」と読み替えられています。
すなわち、混同の消滅による規定が、通常使用権者においても規定されております。
したがって、通常使用権者であっても、混同により消滅する場面があることがあると解ります。
だからこそ、このような規定があるのでしょう。
平成23年改正前は、特登令施規則34条第1項においても、「専用実施権者、通常実施権者」と規定されておりましたので、特許法の登録された通常実施権者も、混同により消滅するものと解されます)。

受験生レベルではここまで追う必要は無いと思います。
「混同をした場合/しない場合の不都合」等を検討していけばよろしいかと思います。
(ざっくりまとめただけです)

↓【以下追記有り】