言葉の使い方

例えば、「第三者対抗要件」という言葉があります。
これを仮に「対抗要件を有する」と言う、すなわち「第三者」と入れないと間違いでしょうか?

自分は、Aさんが言ったら「良いですね」といいます。
しかし、Bさんが言ったら「第三者対抗要件と言ってください」と訂正することがあります。
この違いは何でしょうか?

Bさんが嫌いだから!という訳では当然ありません。


これは、Bさんが普段から用語の使い方に正確性を欠いているためです。
結局Bさんが「この言葉はこんな意味だろう」という感覚を持っているからです。
これは、Bさんがいい加減という意味ではありません。
普通の感覚しか持っていない為におこります。

これが、口述試験では更に顕著に感じられます。
口述模試のとき、国内優先権を出題しました。
「先の出願はいつ取下げられますか?」という問題に対して、

「出願日から1年3月を経過した後に取り下げられる。」
「先の出願日から1年3月を経過した場合に取り下げられたとみなす。」
「先願から1年3月後に取り下げられたものとみなされる。」

と回答が返ってきます。
こういう受験生に、「条文通りに答えて下さい」と言っても、もう答えられません。
当然、その後条文を見てもらいます(口述は条文を見ることできます)。
その直後、言ってもらうのですが、まず間違えます。
条文を見た受験生の大半は正しく答えられません。

「その出願の日から1年3月を経過した取り下げたものとみなす。」

です。

答えられない箇所はほぼ赤字の2箇所です。
結局、この受験生は普段から「条文の文言」を軽く考えています。
何故ここでは「とき」「後」「時」なのか?といったことを意識していません。
「どうせ、同じ意味だろう」と考えているのです。

たまたま条文の言葉と思うかも知れませんが、こういう受験生は論文答案も同様のことが起こっています。
論証がかなり「雑」になりがちです。
そして、合格後、実務をやるときにも明細書にその癖は現れます。
用語のゆらぎが多く出てしまうのです。

したがって、そういう受験生と解っていれば、かなり正確性まで要求してこちらも回答していきます。
口述試験直前では治らない癖です。早い段階で修正して欲しいからです。

冒頭の問題で「対抗要件」と答えても間違えではありません。
確かに「対抗要件」と「第三者対抗要件」は同じ意味です。
こちらとしても「あってます」と軽く流した方が楽です。
しかし、結果として困るのはその受験生なのです。

指摘すると、「今回は同じ意味だ」と不満そうに言われることもあります。
ただ、通常の受験生は都合良く、言葉を使い分けるということはしていないのです。
それゆえ、普段から正確に記載して欲しいから細かく伝えているのです。
なので、「いじわる!」と思われても、やはり伝えていかないとダメだと思っています。
「どうせ同じ意味だろう」と考えるのが普通の感覚なのです。
だから、みんな勉強して必要以上に注意を払っているのです。
気がつかない受験生は出来ない受験生ではありません。
普通(平均)の受験生です。
逆に最初から気がつく人が天才(例外)なのです。

このように、同じような質問であっても、質問者によってこちらも回答が変わります。
したがって、ブログのコメントだけでは、あまり深いことを返せないことがあるのです。
これは、ブログ上の限界だと思います。
先日もご質問頂きましたが、内容としてこれは適切に返せないと感じました。
その場合は大変申し訳ありませんが、「回答出来ない」とさせて頂いております。