外国語書面出願と分割出願について

質問がありましたのでお答えします。

過去問の条文への落とし込みを数週間前から始めたのですが,H15ー23ー(二)の枝で,外国語書面にイ,ロが記載され,かつ,その外書の訳文にイのみが記載されている外書出願を分割して,ロについて特許出願が出来る(審査基準より)と解説があります。
確か短答アドバンスでも,外書の訳文がなくても,原出願である外書から,訳文のない一部を分割出願できると書かれておりました。
しかし,入門や短基礎では,訳文がなければ客体がないため分割できないと習ってきましたし,44条には特に規定がありません。
の場合,外書の訳文が提出されていなくても,現出願(外書)から分割ができると理解しておけばよろしいのでしょうか。それとも,授業で習ってきたように,訳文がないため,客体がなく,分割できないと理解しておけばよろしいのでしょうか。

分割出願については、過去何回かブログで書かせて頂いておりますが、この辺の記載が無かったので改めて記載したいと思います。

まず、外国語書面出願については、第1関門として、「翻訳文」が提出される必要があります。翻訳文が提出されることにより、明細書があると扱われるためです。この時期的要件は、審査基準9.2.3となります。

9.2.3 分割出願が可能な期間
外国語書面出願について出願の分割が可能な期間は、通常の日本語出願の場合と基本的に同様であるが、外国語書面出願を原出願として分割出願をする場合、原出願についての翻訳文提出前は、分割の対象となる原出願の明細書等が存在しない状態なので、この間に分割出願をすることはできない。

さて、分割出願が出来る状態になったとき(第1関門クリア)、次はどの範囲で分割出願出来るかと言うことになります。
外国語書面については、原文の範囲で可能となります。

9.2.2 審査実務
(1) 原出願が外国語書面出願の場合(ケース1、2)
分割の実体的要件のうち、「原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であること」(第?部第1 章第1 節「出願の分割」2.2「実体的要件」(1) の(ii)又は(2)の(ii))については、原出願の外国語書面に記載された事項の範囲内となる。しかしながら、原出願の外国語書面と翻訳文の内容は一致している蓋然性が極めて高いので、通常、当該要件の判断に当たっては、原出願の翻訳文と分割出願の明細書等に記載された事項を比較すれば足りる。

ここで、本来翻訳文は、原文と同じものでなければいけません。特許請求の範囲と明細書の関係のように、例えば明細書には「イロハ」を記載し、特許請求の範囲には「イ」のみを記載するといった選択的な記載は本来はしてはいけません。
原文が「イロハ」であれば、翻訳文も「イロハ」とするのが原則です。

1.4 翻訳文
(3) 第36条の2第2項に規定する翻訳文としては、日本語として適正な逐語訳による翻訳文(外国語書面の語句を一対一に文脈に沿って適正な日本語に翻訳した翻訳文)を提出しなければならない。

仮に、原文に「イロハ」と記載してあるのに「イロ」しか訳していない場合、この「ハ」を翻訳文に記載するためには誤訳訂正書を提出します。

さて、冒頭の話に戻ります。このとき「ハ」を分割出願できるか?という内容ですが、この場合審査基準に書いてあるように可能です。それは、本来であれば、一度誤訳訂正書を提出すれば、「ハ」の記載を翻訳文に書けるからです。

訳文イロ/原文イロハ→(誤訳訂正書提出)→訳文イロハ/原文イロハ→(分割出願)→ハ

であれば、この青字の部分については、手続を省略し、直接分割出願を認めるということです。この辺の扱いは分割出願は原則として当初明細書の範囲で出来ること(削除補正した範囲でも分割可能)と同じ考え方です。