特許における新規性

ゼミで話題になりましたので、新規性についてちょっとだけ。

例えば、出願Xに発明A+Bが記載してあったとします。文献1に発明Aは記載してあり、発明Bは新規なもの。この場合、出願Xは29条1項違反になるでしょうか?

多分、この場合殆どの人が新規性あり。
すなわち29条1項違反には該当しないと答えると思います。

では、文献2に発明Bが記載してあった場合はどうでしょう?

すなわち、出願X(発明A+B)を出願しました。

  • 発明Aは文献1に記載されている。
  • 発明Bは文献2に記載されている。

この場合は・・・29条1項違反にはなりません。
29条1項違反は、出願した発明と同一のものがあるか否かです。
したがって、A+Bのものがなければ新規性はあるのです。

このように、文献1+文献2で新規性無しという結論にはなりません。
新規性違反については、引用文献は1つです。
それは審査基準にも記載があります。

1.5.4 請求項に係る発明と引用発明との対比
(4)独立した2以上の引用発明を組み合わせて請求項に係る発明と対比してはならない。

例えば、こんな発明を考えましょう。

「餃子の中にラーメンを含む飲食物」

餃子を食べると中にラーメンが入っています(スープ入り!)
すなわち、餃子とラーメンとが同時に食べられるという斬新なものです。

この場合当然

文献1:ラーメンが記載されている文献
文献2:餃子が記載されている文献

があるはずです。
だからといって、ラーメン餃子に新規性はありますよね?

したがって、この話は進歩性の話になります。
文献1+文献2の組み合わせが容易に想到出来たか否かです。
例外的に、文献2が周知文献の場合は、追加される場合があります。

例えば、

牛肉を入れたラーメン

があったとします。ところが牛肉を入れたラーメンは文献1で公知です。

文献3:牛肉を入れたラーメン

ここで、出願人が文献3を読んでみると、文献3はラーメンにメンマが入っていません!
自社のラーメンにはメンマが入っています。
したがって、

牛肉とメンマとを入れたラーメン

と補正しました。このとき・・・ラーメンにメンマを入れるのは常識です。
これを特許的には周知技術といっております。

したがって、この場合文献3に基づいて新規性がないと判断されます。
拒絶査定に「ラーメンにメンマを入れるのは周知である(例えば周知文献1参照)」と記載されます。

これは例外であって、新規性違反を言えるのは1つの文献が原則です。
周知文献等で例外的に組み合わせる場合もありますが、例外と考えて下さい。
なお、審査実務上は、このような微妙な主張をされないように、29条1項、2項と両方通知してくることが大半です(文献1つでも、出願時の技術常識を組み合わせたらという表現で進歩性も通知してくることが多いです)

蛇足

さて、ここで受験生の大いなる勘違いですが・・・
最初のA+B。よくAは公知、Bは新規と問題では書いてあります。
しかし、実際は本当に新規の発明はそうそうありません。
だから、Aとか、Bとかで見ればそれぞれ新規性は無い(知っているもの)になることが大半です。

あとは、それを組み合わせることにより、そういう組み合わせの発明はないよね?と進歩性を主張しているのです。

事例なので簡単にしていますが、従来全く無かったBという発明は、滅多に出るものではありません(新しい料理はたくさんありますが、一つ一つの食材をみたときに、食材自体が全く新規というのは滅多にないのと同じです)