著作権ロンダリング

色々と面白い言葉が出ますね。

さて、ネットで以下の様なやり取りがあったようです。

  • A氏が、箱根駅伝完全ガイドという本に基づいて、各選手の好きなタレント一覧という表を作成。この表は数年分の経緯がわかるように作成している。
  • ただ、表を作る事で色々な影響があるため、表には「転載禁止」の文言を記載して掲載。
  • B氏が、「転載禁止」の文言を削除(改変)し、ネットに掲載
  • それに基づいて、「箱根駅伝出場選手の好きな女性タレントクッソワロタ」というタイトルで各まとめサイトに転載される

更に詳しい経緯は、ここ等を参照してください。

問題となっているのは、B氏が転載禁止の文言を削除したため、各所に転載されてしまったという点です。
このB氏の行為については、著作物を勝手に改変していますので同一性保持権の侵害になりますし、作成者の名前を削っていれば氏名表示権の侵害となります。
しかし、侵害に該当するためには、当該「表」が著作物となるか否かという論点があります。

通常、あるデータに基づいて作成された表は、「創作性」が否定され著作物には該当しません。
データを集めた著作物で争われた判例としては、松本清張作品映像化リスト事件があります。
当該判例では、松本清張の作品を頑張ってまとめた編集物について、著作物は否定されています。
かなり頑張ってまとめているのですが・・・認められていません。

著作権法は、簡単に言うと「創作性」は評価するもので、「努力」は評価しないことが多いのです。
典型的なものとして、ライブドア裁判傍聴記事件があるでしょう。
裁判傍聴記を必死にメモってきて、それをテキストに起こしています。
かなり大変な作業だと思いますが、この作業に関する努力は評価されていないのです。

では、今回の表は全く評価されないのかと言われると、そう判断するのは早計です。
それは、書籍に掲載されている全員分を抽出しているという訳では無いためです。
この抽出作業に創作性があるのであれば、著作物として認められると考えられます。
この判断は訴訟で争わないと結論は出ないでしょう。

従って、A氏から相談を受ければ「著作物として保護される。したがって同一性保持権・氏名表示権の侵害である」と主張していきます。
仮にB氏から相談を受ければ「そもそも当該表は著作物ではない」と主張していきます。
結論は出ないと思います。

また、研究者であれば、自説の考え方に基づいて、どちらかの結論を出します。

では受験生ならどうするか?ですが・・・こういう問題は出題される可能性が低いので、「合格後に考えよう」と流すのが適切な対応と個人的には考えます。

ただ、禁転載と記載あるのでしたら、わざわざ、それを削除して掲載するというのは良い行為ではありません。
個人的には問題があると思います。