著作権切れ書籍データのネット公開停止のニュース

著作権が切れた書籍を国会図書館がネットで公開したところ、出版社側から「勘弁してほしい」との話があり、図書館側が折れたという話。

国立国会図書館が「近代デジタルライブラリー」でインターネットに無料公開していた著作権の切れた書籍が、当分の間、館内での閲覧だけに制限されることになった。
ネット公開について出版社側から抗議があり、国会図書館が検討会議をした結果、「出版事業の維持に直接の影響を与える可能性を現時点では否定できない」として、当面インターネットでの提供を停止する。

ネットでの書き込みを見ると、出版社側にけしからんと思っている人が多いようです。

今回の件は、ある程度仕方ないのか?という気が個人的にはしています。
確かに簡単に見れば「著作権が切れたコンテンツを利用して出版社が設けている」という見方が出来ます。
しかし、今回は青空文庫のようなものとは事情が異なると思います。

それは、元々の書籍がかなりボリュームがあるということです。
見てみると、現在公開停止された書籍は一巻辺り約500ページ。
それが70冊程度ありますので、35,000ページとなります。

これをスキャンして、公開するというのが「個人」(民間の法人)が無料で行っているのであれば仕方ないと思います。
ただ、35,000ページを電子化するというのは膨大な作業です。
これを、国会図書館が業務として行っています。
それ自体は作業として良いのですが、国だから税金を使って出来たことによって、民間の事業が圧迫されてしまいます。
結局、今回はこの点が問題になるのだと思います。
国会図書館の電子化は、別に今回の公開目的だけで行われているものではないと思われます)

仮に、著作権が切れた段階で今後は公開されるとなると、同様の書籍の出版は今後行われなくなるでしょう。
特に、今回の書籍のように一般的なものでは無い場合、購入者も限られます。
それなりにコスト回収にも時間がかかると思われます。
そうなると、困るのは「書籍版を購入したかった人」になります。

永久に非公開とするのはやり過ぎでしょう。
ただ、ある程度配慮することは、適切な対応ではないでしょうか。

我々の場合ですと、青本がPDFで公開されています(著作権切れではないですが)。
しかし、書籍版を買う人は多いと思います。
殆どの人がPDFを利用し、書籍版の購入者が激減すれば、今後書籍版は刊行されなくなります。
そうすると、結果として困るのは書籍版を購入していたかった人です。

確かに出版社側が経営的に見通しが甘かった点もあると思います。
ただ、購入者の要望が強く、それでオンデマンドによる出版をした場合もありますので、一概に「出版社が悪い」と決めつけるのも少しかわいそうな気がしました。