特39条と特許査定

論文の答案を見ていると、時々特許法39条について「先願が特許査定となった場合に39条に該当する」と記載する人がいます。
あながち間違いでは無いと思いますが、少し気になる表現です。

実際、39条違反になるということは、「先願の地位」が必要です。
拒絶査定や、みなし取り下げになってしまうと先願の地位はありません。
したがって、結論として「特許査定」と覚えている人がいるのだと思います。

ただ、実務的には少し異なります。
この辺は審査基準を参考にすると・・・

4.1.1 出願人が異なる場合
出願人及び発明者が異なる場合には第29条の2の規定を適用する。
出願人が異なり、発明者が同一の場合には第39条の規定を適用するが、同一発明の後願であるという拒絶理由によって拒絶査定をする場合には、先願の確定を待つこととする。

と、基本は「29条の2」に該当します。
39条と29条の2については、青本にどちらでも良いと書いてありますので試験的にはどちらでも良いと思います。
しかし、実務的には29条の2が適用されます。

そして、発明者が同一の場合は29条の2が適用出来ませんので、39条が適用されます。
この場合は、先願の確定を待つということですので、例えば特許査定が含まれます。

4.1.2 出願人が同一である場合
出願人が同一である場合には、先願の確定を待たずに後願に拒絶理由を通知し審査を進める。
未確定の先願(出願審査未請求のものを含む)に基づき後願に第39条の規定に基づく拒絶理由を通知する場合には、拒絶理由が解消しないときは先願が未確定であっても拒絶査定をする旨を拒絶理由通知に付記する。指定期間経過後、拒絶理由が解消していない場合には、拒絶査定をする。
ただし、後願の拒絶理由通知に対する応答時に先願が審査請求されているが審査に着手されていない場合であって、後願の拒絶理由通知に対する応答において、先願について補正の意思がある旨の申し出があった場合には、以下のように取り扱う。
(1)先願に拒絶理由がある場合には、先願に拒絶理由を通知し、指定期間の経過後、先願の補正の有無及び補正の内容を確認した上で後願の審査を進める。
(2)先願に拒絶理由がない場合には、先願の特許査定の後に、後願の審査を進める。

ここで、同一出願人の場合、先願について「特許査定」とならなくても良いのです。
とりあえず同じ出願をしてきている場合には、39条に該当する運用が出来るのです。

このような場面もありますので、単純に39条の要件として答えるときに「特許査定ありき」というと、少し言い過ぎ=違和感を覚えるのです。