「特許事務所の大規模化」

何か、唐突な話題な気もしたのですが・・・

特許事務所の大規模化を後押しするため、特許庁規制緩和に乗り出す方針を固めたことが1日、分かった。利害が対立する依頼者の案件を取り扱うことを禁じる規定が厳しいため、弁理士が別の特許事務所に移ることが難しかった。これが大規模化を妨げているという指摘があるため、制約を緩める。専門性を持つ弁理士を多数集めた「総合病院型」の特許事務所の増加を促し、安倍晋三政権の成長戦略の一つである「知的財産立国」の実現につなげる狙いだ。

正直、どうなの?と思わざる得ない状況です。

医療分野等と、特許事務所の分野とでは全然違う話です。
そもそも「コンフリクト」については、A社とB社とが同じ事務所でやることに問題があるという前提です。
それは、単に利益相反だけの話では有りません。

例えば、A社の出願でX(下位概念X1)という発明を出願します。
その後、B社の出願でX’(下位概念X2)という発明を出願します。

このとき、弁理士は当然明細書では技術を広げて記載します。
そうすると、B社の明細書で下位概念X2を記載したときに、弁理士はX1という技術を知ってしまっています。
そうすると、B社の明細書に限定的解釈を避けたり、中間対応のためにX1も書きたくなる訳です。

X1という技術が発明だったら書かなければ良いとなりますが、知っている以上、やはり記載をしたくなるのが人情です。
また、X1が完全に新しい発明なら当然記載しませんが、例えば公知技術とグレーゾーンの場合、やはり記載せざる得ません。
通常、同じ分野の明細書であれば、後から書いた方が内容は洗練されていきます。
したがって、競合他社の出願の場合、後から出願した明細書の方が質が良くなります。
A社の出願は、B社の明細書の質を上げるための出願になるのです。
これは極端な例ですが、実際こういうことを嫌がってクライアント側からコンフリクトのある事務所は回避する訳です。

それ以外にも、スケールメリットが殆ど活かせない明細書作成業務が中心の特許事務所と、先端医療等資金や施設が必要な病院とを同列に考えるのはどうかと思います。

現在日本の特許事務所の半分以上は弁理士が1人の事務所です。
今回のニュースはちょっと色々と考えさせられるニュースでした。