21−25−ホ

質問があったのでお答えします。

特許出願Aの特許請求の範囲には、「リパーゼを用いたX方法」と記載され、その明細書の発明の詳細な説明には、リパーゼとしては、ある種のリパーゼ(Raリパーゼ)が有利であり、他のリパーゼ殊に公知のαリパーゼは不適当である旨が記載されている。一方、Aの出願前に頒布された刊行物に「βリパーゼを用いたX方法」についての発明が記載されている。このときAは、当該刊行物に記載された発明による新規性欠如の拒絶の理由を有する場合がある。なお、リパーゼとは脂質を分解する酵素の総称であり、Raリパーゼ、αリパーゼ、βリパーゼ等の種類があることがAの出願前に公知であるものとする。

さて、この問題で問われているのはリパーゼ事件です。ポイントはクレームと公知事実となります。
リパーゼ・・・何か難しいですよね。ということで、ちょっと問題を置き換えてみます。

特許出願Aの特許請求の範囲には、「麺類を用いたグラタン」と記載され、その明細書の発明の詳細な説明には、麺類としては、ある種の麺類(うどん)が有利であり、他の麺に公知のラーメンは不適当である旨が記載されている。一方、Aの出願前に頒布された刊行物に「パスタを用いたグラタン」についての発明が記載されている。このときAは、当該刊行物に記載された発明による新規性欠如の拒絶の理由を有する場合がある。

ここで、特許出願Aの権利範囲は「麺類」を用いたグラタンなのです。
うどんグラタンとか、その類を想像して見てください。で、麺類はそれぞれ公知であり、組み合わせが新しいと言っています。
ただ、ラーメンはちょっとまずい?ので不適当となっています。

そうはいっても麺類には、うどん、ラーメンだけでなく、そば、パスタが含まれます。
したがって、公知事実に「パスタを用いたグラタン」があれば、これは新規性がありません。
麺類にパスタが含まれる以上、これは同一の発明が開示されていることになります。
仮に特許出願Aが「うどんを用いたグラタン」としっかり特許請求の範囲で限定されていれば問題ないのです。

ただ、公知例として「ほうとうを用いたグラタン」となっている場合、「うどん」と「ほうとう」は同一では有りません。
しかし、実質同一と判断されれば、やはり新規性が無いこととなります。