条文を読みこなす

条文は細かく、正確に読んで欲しいと思っています。
いい加減に読んでしまうと、結局理解に繋がらないからです。
ただ、この条文を正確に読むというのは難しい作業ですし、簡単にできるのであれば受験機関は不要になります。

質問1

商46条1項3号は冒認ではなく、例えば甲が死亡し、乙に承継されるはずだった商標を、丙が乙に無断で出願した場合に適用される無効理由なのでしょうか。

商標法46条1項3号に関する質問です。
この条文は解っていない受験生が多い条文の一つです。
条文には、

その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。

と書いてあります。「商標登録出願により生じた権利」と条文には書いてあり、出願前のことは書いてありません。
すなわち、商標は出願することにより、「商標権が取れるかも」という期待権が生まれます。
それに対して、勝手に出願人変更届等を提出し、甲から乙に変更して登録してしまったという場合が問題になります。
こういう場合に無効理由に該当するというのが商46条1項3号の規定です。
この後、質問者はいくつかの事例を上げて聞いていますが、結果的に「商標登録出願により」という条文の文言が読めていないことになります。

質問2

質権についてですが、何故商標の先使用権については質権の設定が出来ないのでしょうか。当該法定通常実施権は、商標を使用する権利であり、許諾通常実施権とは性質が異なるため、禁止権の範囲にまで使用する範囲が及ぶからでしょうか。あるいは、出所混同防止の観点からでしょうか。

こちらの質問者の場合はほぼ回答が質問に含まれてはいます。
商標法32条を読むと「商標の使用をする権利」と書いてあり、通常使用権を有するとは規定されていません。
例えば、特許法79条は明確に「通常使用権」と書かれている点と大きな違いがあります。

したがって、通常使用権でない以上、質権の設定も出来ません。
なお、通常使用権としていない理由は質問者が書いているように、先使用権者が登録商標の禁止権の範囲を使用している場合があるためです。