条文を読むということ

弁理士試験は条文を読むことがとても大切です。
最初の頃は条文なんて読まなかったけど、短答試験の結果を踏まえて「条文を読まなきゃ」という意識へ変わった人も多くいます。

確かに条文を読むことは大切です。ただ、物事には順序や段階があります。
条文を読むことをやり過ぎるのもまた問題です。
受験生の皆さんは、どうもまじめな方が多く、言われたことをキッチリやろうとして、逆に困っている人もいる状況です。

たまたま、講義の範囲からか、商3条1項3号について数人の方から質問を受けました。質問内容はそれぞれ異なっていましたが、共通しているのは「細かく条文を読んでみ気がついた!」というのが理由のようです。

条文を細かく読みましょうというと、今度は本当に細かく読んでくれます。
ただ、単に言葉だけを追っても仕方ありません。
まずは、「条文の本質」、すなわち「そもそも何故この条文があるのか?」という部分の理解が重要です。
条文を読みすぎて、ここから離れてしまうことが多いのです。

例えば、商3条1項3号は、おおざっぱに言えば、指定商品等との関係で「そのままじゃん!」ってツッコミを入れたくなる商標です(難しく言えば記述的商標と言います)。
すなわち、自体商品等識別機能が発揮できなかったり、出所識別機能が発揮できない商標が本号に該当します。

条文だけを追っていくと、今度はこの原則を忘れてしまいます。
そして「産地」「数量」など一つずつの言葉を小さな視点で追ってしまいます。
で、「わからない!」となってしまうのです。

ただ、過去問とか思い出してみてください。
商3条1項3号では、この言葉自体はそれほど重要ではありません。
そもそも、商3条は商3条1項6号を導き出すための規定であったりします。
このように、試験的な重要度が下がる文言について、試験で問われているところと同じレベル(労力)で読むのは、今度は試験戦略上得策ではありません。

すなわち、条文の読み方ですが・・・

(1)まず、そもそも何故その条文があるのか(ざっくりイメージ)
(2)条文で過去問で問われている部分はどこなのか?(優先順位をはっきり)
(3)<(1)(2)が出来たら>条文を細かく追う

という3段階に分かれています。
ただ、「条文を読もう」とすると、いきなり(3)をやってしまいます。
仮に、(1)(2)を意識する人もいますが、やはりこの場合は(1)〜(3)を完璧にやろうとして破綻します。

講義でもまず(1)について話すようにしています。
まずは条文を大きく理解し、そこから細かい内容に入っていく方が理解しやすいからです。

それが出来てから(2)の知識をいれていく。
そして最後が(3)です。ただ、普段から条文を引く習慣をつけていれば、(3)はそれほど難しく無いと思います。