キャラクターの保護

スクウェア・エニックスが発行する漫画誌に掲載されていた「ハイスコアガール」の著作権法違反の問題は、色々とニュースになっておりました。

さて、この件について、色々な受験生が悩んでいたのが「キャラクターには著作権はないのではないか?」という話です。
これについては、まさに判例学習の弊害が顕著に出ている例だと思いました。

その根拠となっているのが、最高裁平成9年7月17日の「ポパイ事件」です。この中で最高裁が「キャラクターは著作物ではない」と判示したためです。
この結果だけが一人歩きし、結論が解りやすいため多くの受験生が「キャラクター=保護されない」と考えています。

しかし、ちょっと考えて見てください。
例えば自分がこれ問のキャラクターとして「ドラえもん」を勝手に使ってもOKでしょうか?

(・∀・)<「アウトー!」

そうですよね。だめですよね。

さて、法律を勉強するときは、まずは「妥当な結論」を導いて下さい。
あとは、それに対して法的な理屈がつけられるかどうかです(特許法等でも同じです)。
明らかに、勝手にキャラクターを使って販売したらダメというのは解るのに・・・最高裁判例が邪魔をする訳です。

さて、この最高裁判例、正確には少し違った表現です。

著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。

簡単なイメージで言うと、
「絵を離れた状態で保護することは出来ない」
ということです。

だから、「弱虫な小学生が困ったときはポケットから秘密道具を出して助ける、ネコ型ロボット」のような、漫画から離れたキャラクター自体は著作物としては保護されませんよということです。
したがって、キャラクターを表した絵を利用すれば、それは複製権又は翻案権の侵害となる訳です。

キャラクターの無断利用についての権利行使は、それ以前の判例サザエさん事件)で認められています。ではこのポパイ事件では何が争われたか、結局ポパイの著作権の権利期間をいつまで認めるかという点が問題となったのです。
その中の一つの論点でもあり、この事件は最終的に権利期間の論点で結論が処理されています。
決して、「キャラクターは著作物に該当しないから権利行使出来ない」と判断された訳では無いのです。この点が多く誤解されている点です。

キャラクター関連の事件としてもう一つ有名なものに「ときめきメモリアル・アダルト事件」があります。有名なパラメータ改変とは別のときめきメモリアル事件です。

ときめきメモリアルは、もう一つの事件でご存じのように、ゲームの登場人物である藤崎詩織と男子生徒とが学園生活や日常生活を通して、恋愛関係を構築するというゲームです。ここで、藤崎は優等生的で、清純な、さわやかな印象を与えられる性格が与えられています。
訴えられたビデオは、続編として勝手に制作された物で、露骨な性描写を内容とする成人向けのアニメーションビデオでした。

仮に、キャラクターが全く保護されないというと、このような制作・販売行為が認められてしまうのです。裁判所は、登場人物の藤崎は実質同一と判断した上で、複製ないし翻案したものと認めています。そして、異なる性格描写がされていることから同一性保持権を侵害している極めて悪質な行為とし、損害賠償を認めました。

この事件は悪質であったことから同一性保持権侵害まで争われていますが、単純にキャラクターを使えば、複製権又は翻案権を侵害していると判断されることになるでしょう。
結局、キャラクターの「絵」を複製・翻案すれば著作権侵害となる訳です。