明細書と特許請求の範囲

さて、先日の内容だともう一つ疑問が出てくると思います。
それは、明細書では、

心拍数に基づいて患者の体調を判定する発明。

が書いてあります。しかし、特許請求の範囲には、

患者の身体情報を検出し、検出された身体情報に基づいて患者の状態を判定する発明

となっています。

これが、問題だと「イ/イ」と記載されてしまうので、受験生としては全く同じ事が書いてあると思いがちです。
しかし、特許請求の範囲と明細書の記載とを同じに書くことは滅多にありません。

それは、あまりにも権利が狭くなってしまうからです。
あくまで、明細書は実施の一形態です。
例えば、患者の身体情報と書きましたが、心拍数以外にも、体温、血圧、体重、呼吸数といった誰にでもはかれるもの。また、血糖値といった値や、頭痛の回数、発汗量といったちょっと違ったものまで全部身体情報に含まれる訳です。
また、患者の状態といっても、体調は優れるか否か以外にも、熱発の有無だったり、患者が起きてるか寝ているかという状態だったり、赤ん坊なら泣いているか、お腹が空いているか。あらゆる事が想定できます。

これを全部明細書に書くのは不可能でしょう。したがって、上位概念だけ書いておき、それが全部含まれますよという形をとっているのです。ただ、心拍数の明細書から、血糖値に基づいた体調判定とか当業者であっても容易に想到できないでしょう。
なので、今度はどこまでが当業者が明細書から導き出せるのかということになります。

すなわち、発明を全部書くことは不可能です。
したがって、一例を明細書に書いてそれの上位概念を特許請求の範囲に記載します。
このとき、複数の実施形態を記載する事で、明細書の記載に限定されないようにするのが一般的です。

実務をやっていないと非常に解りにくいところではあります。
一度、公開公報をご覧になってみるのも一つの勉強となります。