考え過ぎる受験生

質問があったので、それを題材にお答えします。

特134条2項では、「特131条の2第2項の規定により請求書の補正を許可するときは」とあり、延長登録無効審判は除かれています。特134条2項において延長登録無効審判が除かれているのは、「延長登録無効審判の場合、被請求人に副本を送達し、答弁書を提出させる実益はあまりない(?)」程度の理解で十分でしょうか。

さらに、「再検討」を促したら、以下のような質問となりました。

審判請求書の要旨変更補正が必要なのは、被請求人が訂正請求をし、その訂正請求により請求の理由を補正する必要が生じた場合です。…ということは、延長登録無効審判では、被請求人が訂正請求をすることがないので、請求人は審判請求書の補正をする必要がない。よって、被請求人に手続補正書の副本を送達し、答弁書を提出させる必要はない。そのため、特134条2項では延長登録無効審判が除かれている。ということでしょうか。

細かいところは多々気になるのと、質問者がどこまで理解しているか解らない問い方です。また、おそらくこの考えでも問題は解けるので、「良いと思います」とあっさり返すのも一つの方法なのですが、自分も悪い癖で「根本」を直して欲しいので、なかなかOKとは言いません。

さて、根本としてこの質問は何が問題でしょうか?
それは、「134条2項で延長登録無効審判が除かれている」という考え方が、そもそも「条文にない」考え方だということです。

「そうはいっても、準用条文を読んでいけば、読めるじゃないか?」

確かにその通りです。

その通りですが、条文から除くという明確な規定は無いのです。
拒絶査定不服審判、訂正審判は161条、166条で除外されています。
しかし、延長登録無効審判については、受験生が作った要件に過ぎません。

ここで、「1年合格」をする受験生を見ていると、この辺の規定は条文通りに理解する人が大半です。すなわち「無効審判では、XXXなっている。」という理解をキッチリし、「延長登録の場合は」と+αを考えていません。
考えていないというより、1年目の受験生は、そこまで意識が回りません。
したがって、条文に忠実に理解をします。
延長登録が云々まで思いつかないのです。
そして、134条2項における延長登録無効審判の取扱いは過去問で出題がありません。
したがって、あっさり短答試験に合格します。

しかし、2年目、3年目・・・と勉強が進んでくると「条文を理解しよう」と思いを巡らせることが多くなります。
その結果、このような+α、悪く言えば余計なことを考えだします。
すでに、「条文に直接文言が無い」ことから、条文から離れているのです。

これも、明確な理由付けが出来るのであれば問題有りません。
例えば、そもそも「無効審判」は審理の対象が変わる(訂正によって変わる)のですが、「延長登録無効審判」は対象自体は変わらないという大前提があります。
そこから理解していけば、知識も整理できます。
知識の整理は出来ますが・・・現実的にはそこまで頭が回らないでしょう。

その結果、条文を理解するつもりが、逆に混乱し、本質的な理解も落としてしまうという状態に陥るのです。
そして、試験にでる論点も間違えてしまうのです。

受験生から見ると条文を理解しているつもりの学習ですが、実は条文から離れていたり、過去問から離れていたりする勉強になっているのです。

ある規定を見て「XXについても準用すべきじゃないか?」「XXはYYに適用されても良いのではないか?」という、いわゆる「こうあるべき理解」もその一例です。

規定を考える、文言を一つひとつ理解することはとても大切です。
したがって、例えば質問者のスタンスは非常に良いと思います。
ただ、考え過ぎてしまうのも逆に混乱をする場合があるということです。
(そもそも何も考え無ければこういう事態にもならないですから・・・)

勉強が進めば進むほど考え過ぎて素直に理解するという点が難しくなります。
その素直さを確認するのが条文、青本、過去問なのです。
しっかりその範囲でまずは理解をするという点がとても大切です。

追伸

流れを大きく捉えるということです。
実際質問を見ると、そもそも131条の2第1項第1号の規定との兼ね合いも微妙になったりと、結果的にモグラ叩きの状態になります。