再審により回復をした効力の制限

ご質問があったのでお答えします。

意55条1項と商59条1項です。それぞれ、「無効→回復」の場合を対象にしています。一方、特175条1項では、「無効→回復」に加えて「拒絶審決→回復」も対象にしています。特許の「拒絶審決→回復」は例外で、「無効→回復」が原則でしょうか。

条文の趣旨を考えると明らかです。
そもそも、当該規定は「自由実施(使用)できると信じた者を保護する」という規定です。
特許の場合、出願公開されているため「発明」が開示されます。
その発明が拒絶されている訳ですから、本来は自由実施になります。
自由実施と信じて実施したわけですが、再審という非常不服申立手段により回復した場合、権利効力は及ばないという規定にされています。
したがって、特許法においてわざわざ拒絶審決の場合も規定を設けたということでしょう。

それに対して、意匠法等は、そもそも出願公開制度がないため「実施できる」という期待権が発生しません。
そもそも拒絶となる意匠すら原則公開されません。
したがって、拒絶審決による再審回復でも保護することはない訳です。
商標法も、改正によって出願公開制度が入りましたので、あっても良さそうですが、出願公開制度の趣旨が違うこと、わざわざ滅多に使われない規定である再審の規定を改正する迄も無かったという理由により意匠と同じように認められていないのだと思います。
ここで、商標は保護価値が高いから、出所混同が生じるから等色々理由付けは考えられると思いますが、好きな理由付けでよろしいかと思います(論文試験で出る可能性は極めて低いため)。

このとき、「商標法においても認めて良いのでは?」という質問を受けることがあります。
これについては、産業立法である産業財産権ですから、「認めて良い」と言われれば、別に認めて良いと思います。
この辺については、絶対的な理由はありません。
したがって、「なんでXXXという規定ではないのか?」と仮定で考えるのは、勉強する上で好ましくありません。
仮定で考えればどのような規定でも作れてしまうのが産業財産権だからです。

本質的な理解は必要なのですが、あくまで「合格するため」という前提がつくことに気をつけて下さい。